社を出禁になったOBが語る「森友文書スクープ」でも朝日新聞がはしゃげない事情

社会 2018年5月6日掲載

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忘れられた私の古巣

 私は貸借対照表の見方もわからない、経営にはズブの素人だが、二〇〇一年に『週刊朝日』編集長から十六年ぶりに新聞の世界にもどって編集委員になった時から、デスクも部長も局長も記事の善し悪しを言わないために、紙面が無政府状態になっていることや、取材した事実をわかりやすく描くことより、感想を書いたり、薀蓄(うんちく)を傾けたがる編集委員が目立つことに危機感を持っていた。

 それで取締役であろうと誰だろうと、持論をぶつけ、警鐘を鳴らしてきた。持論と言っても、「記事を書いたら家族に読んでもらえ。家族も読まないような新聞は売るな」という、ごくごく常識的なことである。

 森友の特ダネでは、現役記者からのメールで、後輩に愛のムチを振るう必要のないことがわかった。そう考えている時に、テレビ朝日の女性記者が財務省の事務次官からセクハラを受けたことが音声の証拠付きで報じられた。

 さまざまなご意見があろうが、私は彼女を責める気にはなれない。こんなセクハラはテレビのニュースにはできない。週刊誌に持ち込むしかなかったろうと、私は思っている。

 何より私が残念に思うのは、テレ朝の女性記者が『週刊朝日』や『AERA』の朝日系列ではなく、『週刊新潮』に特ダネを持ち込んだことである。私の古巣や『AERA』は今や、忘れられた週刊誌になったのか。もっとも両誌合わせて十五万部を切るようでは、しかたないか。

川村二郎(かわむら・じろう)
文筆家。1941年、東京生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。「週刊朝日」編集長、朝日新聞編集委員などを歴任。著書に『いまなぜ白洲正子なのか』(新潮文庫)、『社会人としての言葉の流儀』(東京書籍)、『学はあってもバカはバカ』(ワック)などがある。

週刊新潮WEB取材班

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