ベッキーの“入浴シーン”ありでも時代遅れの時代劇(TVふうーん録)

芸能 週刊新潮 2018年4月19日号掲載

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 何だろう、この感覚。決して面白いワケではないし、傑作でもない。むしろ駄作。それでも、懐かしさと恥ずかしさが胸にこみあげてきて、目が離せない。昭和40年代生まれを虜(とりこ)にしてきた、東映・大映ドラマのニオイがぷんぷん。荒唐無稽な学園モノ「スケバン刑事」の風間三姉妹を見たときのような。いや、その前の鉄仮面伝説もすごかったよ。ずっと鉄仮面被っていたら、眉毛つながるだろうなとか、産毛ボーボーだろうなとか、頭臭いだろうなとか、不安しか抱かなかった思春期の迷作。鉄仮面がパカーン開いたら、超絶美人で髪サラッサラの南野陽子が出てくるんだもの。40代の人はあの頃の、テレビに対する優しい気持ちと、甘酸っぱい性的な感覚を思い出そう。

 おそらく誰も注目していない、BSジャパンの時代劇「くノ一忍法帖 蛍火」である。主演はいろいろありすぎて疲弊したベッキーだ。

 公儀隠密のくノ一となったベッキーは、姉を伊賀忍者に連れ去られた恨みがある。姉の婚約者で同じく忍びの高橋光臣に思いを寄せるも、根は純情で生真面目、おまけに生娘っつう設定だ。得意技は、ガッと目を開いて、人の心を操る「忍法蛍火」。決めゼリフは「お心、操らせていただきます」。

 あ、もう満腹? もう少し我慢して。このベタなテイストを、東映・大映ドラマに夢中になった時の気持ちで観ることがポイントだ。

 同じくノ一仲間に、姉御的存在の黒川芽以と、食欲と性欲に正直な樋井(ひのい)明日香がいる。わかりやすいキャラ設定の3人娘が暗躍する。「忍法〇〇!」と解説もついてるんだが、あんまり強そうじゃない。ついでに言えば、殺陣(たて)もひどい。所作も走り方も忍びのキレがまったくない。が、目くじら立てず、心は東映・大映で。

 くノ一モノには必ず性的な技、というセオリーは一応守られている。が、お色気といっても肩を出す程度。ベッキーが敵の男に向かって、肩をぐっと見せるだけ。それでも敵は「こ、これは桃源郷だ~ッ」なんつって、クラクラしてやられるという体たらく。どうか怒らないで。懐かしの東映・大映だと思えば、すべてが許せる!

 個人的には柴田錬三郎派だったので、女刺客が膣に毒針やしびれ薬を仕込んで迫ってくるとか、魅惑の罠が欲しいところだが、ベッキーには望まない。無理だ。

 しかもこの3人娘、あまり強くない。仕事ができない。よくもまあ公儀隠密になれたなと思うほど。キャーキャー言って襲われるわ、すぐ捕まるわ、縛られるわ。

 あ、そうそう、もれなくベッキーの入浴シーンもついてます。だーかーらー、ポスト由美かおるは平成の世にいらないんだってば!

 ちょっと観たくなるでしょ、この時代劇。年輩男性が考える「THE・くノ一」像は、遥か昔の昭和の香り。

 黒川と樋井はうまいけど、ベッキーの演技はどことなく沢口靖子っぽい。融通が利かない、抑揚がない、色気がない。バラエティで見せる柔軟性がドラマでは出ないんだなぁ。でもね、応援する。頑張ってほしい。

 皆様も視聴の際は、必ず心にひと匙の東映・大映愛を。

吉田潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビ番組はほぼすべて視聴している。