なぜこんなにひっそりと放送するのか?NHK「ノーナレ」(TVふうーん録)

芸能週刊新潮 2018年4月12日号掲載

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 改編前のテレビって、つまんねぇ特番が多いよね。新聞のラテ欄を開き、朝から思わず白目剥(む)いてたわ。世間が注目する証人喚問では、驚きの茶番劇が展開されてるし。なんだ、あれ。証人が「答弁控える」って意味がわからん。答弁じゃなくて嘘偽りのない証言をする場なのでは? そんな、へそで茶がまったく沸かない1週間。何を書こうか悩んでいたところ、秀逸な番組がひっそり放送。以前から気になっていたNHK総合の「ノーナレ」である。

 ナレーションを一切入れないドキュメンタリー番組だ。ナレーションの文言は、時として制作側の思い入れを色濃く反映しちゃうので、ぼんやりしとる視聴者はつられがち。取材対象者は淡々と話したのに、ナレーションと効果音で妙に情に訴える演出になったりして。

 ノーナレにはそれがない。対象者の言葉だけで展開していく25分。正直言えば、最初は物足りなさを感じた。ナレーションだけでなく、煽(あお)るようなテロップも展開予告もない。いかにこれらに毒されてきたかってことに、改めて気づかせてくれたのがノーナレだ。いわば「画像と情報の断捨離」ね。

 ドキュメンタリーはこれくらいシンプルでいい。取材内容次第だが、過去放送回も対象が珍しくてよかった。北陸のすし男、ミアタリ捜査、カニ漁師、元ヤクザのうどん屋が面白かった。

 ただし、レギュラーではないので放送予定が掴めず。気づいたら終わっていたことも。NHKオンデマンドでも観られない回があり、問題が起きてお蔵入りかと妄想。それもまた楽しい。

 3月最終週は3日間、新作を放送。日替わりで楽しめた。「津軽 雪空港」(26日放送)は、青森空港の除雪作業に密着。迅速かつ正確に滑走路から雪を排する除雪隊・ホワイトインパルスや、丁寧な仕事で安全を守る整備士のおかげで、大雪が降っても欠航ナシ。利用者からも、航空会社からも、絶大な信頼を得ている空港業界の雄、という内容だ。

 除雪はチーム作業。割と横文字多めの役割分担だが、除雪隊員の朴訥(ぼくとつ)な津軽弁で説明すると、温度が伝わる。気取った俳優のナレーションだったら絶対伝わらない。

「ラーマのつぶやき」(27日放送)には心打たれた。シリアから日本へ逃れてきた難民の家族に密着。ラーマは16歳の女子高生。喪失感と絶望感で家にこもる父、家族のために頑張って働く母。異国で暮らす不安、家族の不和、難民に対する心ない言動についても、毅然と自分の意見を話すラーマ。彼女の聡明で建設的、前向きな語りが、そのまま活かされて展開していく。まさにナレーション不要だった。

「“悪魔の医師”か“赤ひげ”か」(28日放送)は病腎(病変を取り除いた修復腎)移植の是非を問う内容。医者、患者、学者、記者と、当事者がそれぞれ思いを語る。ナレーションでまとめる必要はない。相違や対立があっても、望みはひとつ。「腎移植のドナーを増やすこと」だと伝わってくる。

 次回作を心待ちにするが、お願いだから、ひっそりやらないで。もうちょっと派手に知らせておくれよ。

吉田潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビ番組はほぼすべて視聴している。