“薬物売買”“殺人依頼”も… 盗難NEMが取引「ダークウェブ」に行ってみた

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 仮想通貨の信用を失墜させたのが、コインチェックから580億円分のネムが盗まれた事件である。

 その後、警視庁サイバー犯罪対策課による捜査で、日本人男性の存在が浮上した。「ダークウェブ」と呼ばれる特殊なネット空間を介し、盗まれたネムの一部を、自身が保有していた仮想通貨「ライトコイン」と交換していたのだという。

 資金洗浄の場として使われたダークウェブとは一体、何か。サイバーセキュリティ企業「スプラウト」の高野聖玄社長が解説する。

「グーグルやヤフーなどで検索すると誰でも目にすることができるネット空間をサーフェイスウェブと呼ぶのに対し、検索エンジンでは探せないのがディープウェブです。例えば、有料のニュースサイトや学術データベースなどで、IDとパスワードを持つ限られた人でないと入れない。ダークウェブは、それよりさらに奥深くにあるネット空間です」

 専用ソフトを使わないと、ダークウェブにはアクセスできないという。

「代表的な専用ソフトは、Tor(トーア)です。匿名性が高く、暗号技術にも優れているため、当初は独裁政権下で迫害されている政治活動家やジャーナリストが使っていました。ところが、いつの間にか、その匿名性に目をつけた犯罪者が群がるようになってきたのです」(同)

 実際、ダークウェブを覗いてみると、犯罪絡みの多種多様な商品が並んでいる。

「銀行口座やクレジットカードのアカウント、偽札、銃器、爆弾……。流出したIDとパスワードのリストなども売られています。買い手はそれを元に楽天やビックカメラのサイトに不正アクセスし、他人のポイントを勝手に換金するわけです。一番多いのは違法薬物で、闇取引のだいたい7割を占めます」(同)

 モノだけでなく、サービスもある。

 例えば3年ほど前、熊本の高校生がゲーム会社のサーバーをダウンさせ、警視庁に摘発されたケース。この高校生はダークウェブで、1時間8ドルのサイバー攻撃請負サービスを購入したと言われている。さらには、数千ドルから数十万ドルの値段で殺人の請負まである。これらの闇取引に仮想通貨が使われる。やはり、ビットコインが主流だが、「モネロ」など、より匿名性の高いものが増えてきているという。

 犯罪のツールにもなり得る仮想通貨。リスクに満ち満ちた招待状を受け取るか否かは、あなた次第だ。

週刊新潮 2018年3月8日号掲載

特集「リスク100%『仮想通貨』への招待状」より

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