厚労省「インチキデータ」検証 担当者は取材に“ファックスが席から遠いので”

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「席から遠いので」!?

 これは愛煙、嫌煙以前の問題である。自らに都合の良いデータを「作る」役所を、国民はどう信用すればいいのか。行政の根本的なあり方が問われる事態なのだ。

 官僚の生態を熟知する、作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏が警鐘を鳴らす。

「裁量労働制と今回の受動喫煙の問題は一緒です。厚労省が『わざと』やっているのであればまだマシ。自分たちのやっていることは間違いだったとの認識があるので矯正が可能です。しかし、彼らはおそらく無意識のうちにやっているのでしょう。これを哲学用語で『認識を導く利害関心』と言います。自分たちにとって都合の良いデータを無意識に選んでしまっているということです。官僚は皆、出世したい。上が喜びそうなデータに飛びつく。それは彼らにとって間違ったことではなく、自覚がないので矯正は困難です。したがって、今後も似たような問題が起きるでしょう」

 付言しておくと、以前、「週刊新潮」(17年5月4・11日号)で紹介したが、厚労省には「前科」がある。英国で愛煙家排除の意味合いを持つたばこ規制が導入される前よりも後のほうが、実際はパブから足が遠のいた人の割合が増えていたのに、それを真逆にして紹介し、たばこ規制によってパブの客足は増えたかのように「捏造」していたのである。

 裁量労働制に留まらず、受動喫煙でも一度ならぬ「世論誘導」。これはやはり「ミス」ではなく、彼らの「本質」と言うしかない。

 厚労省の担当部署である健康局健康課に、実験環境の詳細などについて問い合わせたところ、

「それどころではない」

 と、自ら公表したデータを「それ」扱いした上で、質問状をファックスしたので届いたかだけでも確認してほしい旨を伝えると、

「(ファックス機が)席から遠いので」

 こんな対応を見せ、結局、回答しなかった。

 ニコチンの前に、厚労省内のファックス配置を「高濃度」にすることを勧める。

週刊新潮 2018年3月8日号掲載

特集「働き方改革だけではない “捏造”中毒の『厚労省』は受動喫煙データもインチキだった」より

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