道路を走る新幹線!? 「N700S」の陸送に密着

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 運転を誤った老人が道路の追い越し車線を逆走してきた、なんてニュースはよくあるが、車じゃなくて新幹線! 洒落にならん!――といった話ではもちろん、ない。すでにみなさんよくご存じの新幹線「N700系」。その進化型である「N700S」が、JR東海の浜松市内の車両基地に向けて国道1号、つまり東海道を走っているのだ。トレーラーの荷台に“おんぶ”をされて(写真1)。

 出発地は、愛知県豊川市にある日本車輌製造の工場。まず日中のうちにクレーンで吊り上げ、荷台へ(写真2)。公道を使うとあって、陸送のスタートは深夜だ。2月18日、日曜日の午前1時。路上が空く時間帯である。

 とはいえ、工場の門を出たところ、県道の両脇にはズラリと100台ほどの車が停まり、鉄道マニアが大挙して寒さもいとわずたむろしている。

 彼らが向けるカメラのシャッター音がこだまする中、姿を現したN700Sは、県道をひたすら南へ。豊橋市に入って進路を東へと変え、東海道をひた走る。(写真3)はちょうどそのあたり。異形の者がやって来た妙な未来感アリアリだ。

 そんな珍しい道中なもので、マニア、もといファンたちは付きっきりだった。数十台もの車が後を追い、トレーラーが交差点でゆっくり大曲がりする際には撮影大会。並走しつつ助手席から動画を撮る人もいれば、先回りして道端でカメラを構える人もいる。

 その中の一人が、陸送の魅力をこう解説する。

「誘導車に導かれ、車両が公道を進む様子は大迫力です。この非現実的さが良いですね。昔は新幹線を運べるトレーラーなんてなかったから、貨物列車で運んでいました。それが特殊なトレーラーで、カーブだって後輪だけを“ドリフト”させながら曲がれます。なんでこの日に運ばれると分かったか? 事前の交通規制情報から察せるんですよ。中には関係者から教えてもらっている人もいますけれど……」

 ご覧の写真に写るのは、全16車両中の16車両目。工場のキャパシティーなどの関係上、他の車両は日立製作所でも製造しているのだそう。

「日立が製造する車両は山口県下松市の工場で造られ、陸路と海路で運ばれます。が、日立はカバーをかけていて、見ることができなかったと知り合いは嘆いていました」

 かくてファンと追いつ追われつし、静岡県に入って車両基地に着いたのは午前3時半。約50キロの道のりで、計算すると平均時速は20キロとなる。

 ちなみにN700Sは、鼻先の両サイドにエッジを立てて空力性能を向上させたり、ヘッドライトをLED化したりと進化を遂げ、テストを重ねてデビューは2020年の予定。そんときゃ最高時速は285キロだ。こんな風に止まっては見えない。(撮影・本田武士)

週刊新潮WEB取材班

2018年2月27日掲載

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