放送時間は1日4時間! 絶好調「テレビ東京」のどん底時代

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低予算を知恵と手間でカバー

 低予算を逆手に取り、知恵と手間でユニークな番組を輩出しているのがテレビ東京だ。最近で言えば、「池の水ぜんぶ抜く大作戦」「家、ついて行ってイイですか?」あたりは、まさに同局の真骨頂とも言うべき番組だろう。

 もちろん、最近でも民放キー局と比べれば決して予算などは恵まれていないのだが、かつての苦境はその比ではなかった。テレビ東京の前身、「東京12チャンネル」開局当初からを知る元同局役員の石光勝氏は、著書『テレビ番外地』の中で、そのもっとも苦しかった頃の秘話を明かしている(以下、引用は同書より)

 もともと東京12チャンネルは「科学技術教育」を柱とする教育局として、1964年、開局した。娯楽番組もなかったわけではないが、かなり堅めの番組が中心で、たとえば開局特番のタイトルは「科学と人つくり」(出演・池田勇人ほか)という調子なのである。

 当然、視聴率を稼げるはずもなく、あっという間に低視聴率にあえぎ、金を出す企業は減る一方。

 で、どうなったか。

「開局して2年経つと、東京12チャンネルはもう死に体。開店休業の惨状でした。

 1日の放送時間が5時間半に減り、しかもそのうちの3時間は通信制工業高校講座。残りの2時間半も金や手間暇のかからないフィルム番組ばかりで、スタジオを使った番組は驚くなかれ週に4時間しかなかったのです。

 当然ながら人員整理が行われ、4割の仲間が心ならずも辞めていきました」

すごい番組表

 この頃の東京12チャンネルの番組表を見ると、異様だ。平日は午前10時から11時半までは「工業高校講座」が放送され、そのあとは午後5時までなんと「休止」。

 午後5時にようやく再開されて放送されるのは「工業高校講座」の再放送。続いて「たのしい科学」「動物の国」「科学ドキュメンタリー」等が放送され、午後9時には放送終了!

 日曜日になるとさらにすさまじく、朝から午後5時までは「休止」で、午後9時には終了。計4時間しか放送されていないのだ。

 このあと、日経新聞が経営に参加し、また科学技術教育局から一般総合局へ変わり……と紆余曲折を経て「テレビ東京」へとなり、さらなる紆余曲折と試行錯誤の結果、現在に至る。もっとも、テレビ東京になってからも低予算に加えて低視聴率にあえいだ時代は長く、視聴率の「番外地」とも呼ばれていた。石光氏はこう振り返っている。

「近ごろテレビ東京について、『あそこはちょっと違うから、結構見るよ』という声をよく耳にします(略)。

『あそこは違う』という番組編成には、私が育ってきた“番外地”のDNAが潜んでいるような気がして、OBとしては結構うれしいものです」

 テレビ局もかつてと違い、予算が潤沢ではなくなっている。それだけに常に低予算を前提にして戦ってきたテレビ東京の強さが目立つのだろう。

デイリー新潮編集部

2018年2月3日掲載

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