知られざるキーワードは“無尽”!? 最強の健康長寿「山梨県」のDNA

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最強の健康長寿「山梨県」のDNA(下)

 塩分摂取量は多いし、男性の喫煙率も高い。しかし、2013年に厚生労働省が算出したデータによれば、「山梨県」の健康寿命は男女ともに全国1位だったのである。その食文化に迫った前回では、例えば郷土食「ほうとう」について「大きい鍋で作って、人とコミュニケーションを取りながら食べられる。そういう食生活がいいのです」(山梨大学の山縣然太朗教授)といった特長が明らかとなった。

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 山梨県の食文化をさらに探ると、不思議なデータが浮かんできた。人口当たりの寿司屋の店舗数が全国1位で、まぐろの消費量は2位。海がないのになぜか。

「寿司屋が多いのは、山梨には外食する人が多いからで、その理由は“無尽”があるからです」

 そう語る山縣教授によれば、日常生活活動の「維持群」と「低下群」に分けたうちの「維持群」の高齢者には、“無尽”に参加し、定期的に仲間と食事したり、旅行に行ったりしている人が多いことがわかったという。ところで、無尽とはなにか。

「元来は、頼母子講(たのもしこう)という銀行の原型のようなもので、参加者が毎月お金を出し合い、順番にそれを総取りするためのものでした。ところが、山梨ではお金を総取りする風習はほとんど消え、いまでは飲み会、カラオケ会、旅行の会など、楽しみのためにお金を出す形態に変わっています。数人で月に1度集まり、欠席してもお金を出すのが基本で、結果、仲間意識や団結力が芽生え、家族より強い絆が生まれることもあります」

 そうした集まりが生きがいにつながるのは理解できるが、山縣教授は、それだけではないと話す。

「毎日顔を見ている家族が気づかない健康面の変化に、月に1回会う人は気づいたりします。健康情報もシェアでき、たとえば膝が痛いとき、友人が“最近はこんな手術がある”と紹介してくれたりします。ガス抜きの場にもなる。ある60代半ばの女性が入っていた無尽は若妻会といって、40年前に地域にお嫁にきた人同士で作ったとのこと。女性が外に出にくかった昔も、山梨では“無尽”といえば、女性でもなにも詮索されずに外出できました。山梨の女性の健康寿命が長いのは、無尽で姑の愚痴を吐き出すことができた、という事情もあると思います」

 であるなら、無尽経験者に聞くしかあるまい。

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