あなたはまだ「滋賀県」を知らない 平均寿命でトップに躍進、鮒ずしだけではない琵琶湖の賜物

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驚異の川魚

 ほかに滋賀県の食卓によく上るのは湖魚だ。長浜市の郷土料理店「成駒家」の女将(73)が語る。

「アユやモロコは毎日食べて、あとカワエビ。カワエビと大豆を煮たエビ豆という郷土料理がある。湖魚は小魚ばかりやしカワエビも小さく、頭から尻尾まで食べるので、カルシウムがよう摂れるんちゃうかな」

 湖魚のカルシウムによる効果だろう、滋賀には、

「身長が高く、骨が太い人が多いといわれます」

 と説くのは、滋賀大学名誉教授の堀越昌子さんだ。

「輸送や冷凍技術が発達する前、農村はカルシウム不足に悩まされていましたが、滋賀は農村でも湖魚からカルシウムが摂れたんです。また滋賀は人口当たりのお寺の数が日本一で、精進料理として大豆料理が発展した。世界の長寿地域の多くで大豆が食されています。もちろん鮒ずしをはじめとする発酵食品文化にも健康は支えられています」

 女将の話に戻ると、

「漬物やみそ汁も毎日食べて、発酵食品はようけ摂ってる。野菜もよく食べるなあ。滋賀は食事のバランスがいい。魚、野菜、豆、発酵食品が豊富で、米どころやからお米もおいしい。佃煮やみそ汁、漬物は塩分も多いかもしれへんけど」

 だが、塩分に関しては、

「京都の漬物は甘いとさえ感じる。京都に近い滋賀の食事も昔から塩分少なめ」

 と藤田氏。琵琶湖の魚については秋津院長が説く。

「川魚は基本的に青魚ばかりで、血液をさらさらにするEPAやDHAを多く含むため、脳血管疾患や心臓疾患防止に効き目があります。また、頭から全部食べることでカルシウム、ミネラル、ビタミンが摂れて栄養バランスがよくなり、長寿に結びつくのです」

 事実、滋賀県の男性は脳血管疾患による死亡率が全国一低い。がんによる死亡率の低さも1、2を争うほどである。

 (下)へつづく

週刊新潮 2018年1月18日号掲載

特集「平均寿命でトップに躍進 あなたはまだ『滋賀県』を知らない」より

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