「隠れ動脈硬化」最新撃退法 プラークの見つけ方、ハーバード大開発の“血管の炎症抑制”治療

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隠れ動脈硬化“不可逆的病状”のリセット術(上)

 コレステロールや中性脂肪による「脂質異常症」がもたらす“隠れ動脈硬化”。大病の芽は、日々の生活に根を張りながら知らぬ間に体を搦め捕っていく。そのメカニズムから最新の撃退法まで、専門家が指南する。

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 1996年2月、歴史小説の泰斗・司馬遼太郎の命を奪ったのは、他ならぬ腹部大動脈瘤破裂であった。

 脳梗塞や心筋梗塞、大動脈瘤といった動脈硬化由来の疾患は、なべて血液中の悪玉コレステロール(LDL)値と密接に関係していることが判明している。コレステロールや中性脂肪など余分な脂質が酸化すると、血管の壁に塊(プラーク)を形成。これが肥大化して血流が滞り、動脈硬化が進んでいく。一般に、血液中のLDLが140mg/dl以上、善玉(HDL)が40mg/dl未満、中性脂肪150mg/dl以上のうち、1つあてはまれば「脂質異常症」と診断される。その該当者は、全国で実に2000万人とされているのだ。

 診療現場を熟知する帝京大学臨床研究センターの寺本民生センター長が言う。

「脂質異常症に該当する方や、高血圧や糖尿病で数値の悪化が見られる患者さんには、まず一度『頸部エコー』を受けてもらいます。それによってプラークの有無や程度、動脈硬化の進行具合まで分かるからです」

 そもそもプラークとは、

「厚さ1・1ミリ以上の塊を指します。状態の悪い人は複数、また1つで3ミリ以上の塊が見つかるケースもあります。恐ろしいのは、できて間もない柔らかいプラーク。線維化や石灰化が進んだ硬いものは、それ以上肥大化することはまずありません。対して柔らかいプラークは、その後成長する恐れがある。頸動脈の太さは男性が直径6〜7ミリで女性は5〜6ミリ。大体その70%以上が狭窄していれば、治療の対象となります」(同)

 頸動脈のプラークがはがれて脳の血管に飛び、重篤な症状を引き起こすケースも多いのだが、

「頸動脈の狭窄のスピードはゆっくりで、もし詰まっても周囲の血管が迂回路となるため、直ちに死には至りません。ただ血流の悪化によって視神経が傷み、失明してしまうケースはあります。画像で見ると首や脳に細い血管がたくさんできてもやっとしている『もやもや病』と呼ばれる状態になることもあり、これを放置すれば脳梗塞や心筋梗塞を起こすケースが多い。頭部MRIより早く異常を見つけられる検査で将来のリスクを把握し、生活習慣を改善することが大切です」(同)

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