なぜ少女たちは白石被告に心を開いたのか ベテラン相談員が語る「死にたい」の答え

社会2017年12月15日掲載

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「わたしは太っていて不細工です。頭もよくないし、運動もできません。性格も暗くて、小学生のときからずっと同級生に見下されています。わたしが授業中に当てられて答えると、みんなが笑います。体育で同じチームになったときには、すごく嫌な顔をされます。友だちは一人もいません。こんなわたしが生きていることに、なにか意味があるのでしょうか。たとえばどんなに努力をしたところで、不細工な人間が美人になることはないですよね。勉強や運動もそうです。もともと才能がある子には絶対に敵わない。友だちすらできない私を好きになってくれる人が現れるとは思えないし、この先何十年と続く人生を一人で生きていくところを想像すると死にたくなります」(東京都14歳/海月)

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 世間を騒がせている座間9遺体事件。Twitterに書き込まれた「死にたい」という女の子たちの投稿に、“首吊り士”こと白石隆浩が返信し、そこから事件が始まったとみられている。白石容疑者は風俗や水商売のスカウトとして活動していたと報じられており、女性を言葉巧みに操る術には長けていたと考えられる。

「相手に合わせて『そうだよね』『分かる』と言ってあげて、『この人は自分のことを分かってくれる』と思わせたんだと思う。相談した相手が違ったら、あんな事件に巻き込まれなくても済んだのに……」

 そう語るのは長年女子中学生ナンバー1人気雑誌「nicola」の読者コーナーで女子中学生の悩みに答え続けたベテラン相談員「ニコラにーさん」こと米原康正さんだ。

 ニコラにーさんの元に送られてくるは相談は、恋愛や学校生活のことだけでなく、「父親から性的な虐待をされている」などというかなり重いものもある。

 米原さんは「求められている回答はホストクラブ的なもの。気持ちのウジウジに対して『そうだよね』『つらいよね』といった言葉をかけてもらいたいんだと思う」と語る。しかし米原さんは「それじゃ解決にならない」とあえて突き放し、きつい言葉で正論を述べることもあるという。そうした回答を受けた子から、改めて感謝の手紙が来ることもあると言い、読者と誠実に向き合うことの大切さと大変さを語った。

 実は、冒頭で紹介した相談は『リバース&リバース』(奥田亜希子・著)の一節から引用した、フィクションである。舞台は女子中学生を対象にした雑誌「Can・Day!」編集部。著者の奥田さんが「nicola」とニコラにーさんをモデルに、ミステリー仕立ての感動長編として紡いだ一冊だ。

 今回は特別に、“ニコラにーさん”が雑誌を飛び出して、この質問に真剣に答えてくれた。

「キミが書いてるように、性格暗いことが嫌ならどうにかしてそうならないように努力しなきゃ何も変わらない。『いや、これはもう絶対に変えることできない』って思うのなら悩む必要なんてないじゃん。自分が変えられないって思うんだから。

 性格暗いことが悪いわけじゃない。問題は性格とかじゃなく、キミが今の自分に満足してるか、してないか、そこだと思う。満足してないからこの手紙を書いた。だったら、『死にたい』って極端な結論に行き着く前に、満足するのは自分だけでいいから満足できる方法を考えた方がいい。

 不細工な人間が美人になることはないってキミは言うけど、整形手術で美人になることは可能だよ。勉強や運動も才能がある子には絶対に敵わないって思ってるのだって、ほとんどの人が学者やスポーツ選手に勝てるわけがない。才能ない人間が(しかもなんの努力もなく)才能ある人と勝負しようっていう考えが馬鹿げてる。まず自分が何に向いてるか? それを調べるために努力してもいいのではないかな? どんな努力をすれば自分に満足することができるか? まずそれを調べてみようよ」

 親や先生ではなく、第三者の大人だからこそ、相談が出来ることもあるだろう。それが近所のお兄さんお姉さんなのか、ニコラにーさんなのか、はたまたSNSで出会った誰かなのか、その出会いが人生を大きく左右するのかもしれない。あのような痛ましい事件が二度と起きないよう、願うばかりである。

デイリー新潮編集部