すべての妊娠が幸せだけに包まれた夢物語ではない―― 綾野剛主演「コウノドリ」2話 ガン発覚の妊婦を描く

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あの人は誰ですか――

 いよいよ迎えた佐和子の手術当日。帝王切開による出産、子宮全摘出という息をのむ展開が続く。全身麻酔が効くまでのわずかな間、産まれてきたばかりの子どもに目線を送り、がんばれがんばれ、と佐和子はつぶやく。母と新生児を超えた、人間同士の1対1の関係がそこにあった。

 ベビーも佐和子も、一命を取り留めた。検査の結果、ガンの転移もなかった。しかし、子宮を摘出した喪失感は、これからも彼女の人生をたびたび襲うだろう。だが彼女には献身的な夫(福士誠治)が付いている。彼らならば、手を取り合って、かけがえのないひとりの子どもを愛し抜いていけるはずだ。ドラマでは直接描かれないが、子どもたちは産まれた瞬間から人生をスタートさせ、どんなに小さな身体でも、どんな障害を持っていたとしても、懸命に生きようとする。その未来を思って応援する気持ちは、子育て経験者も、そうでない者も、変わらない。その芯に響くからこそ、このドラマは多くの視聴者の共感を集める。

 出産もガンの摘出も、始まりでしかない。前回は「仕事と出産」、そして今週は「ガンと出産」。まさに「コウノドリ」は、出産という奇跡だけでなく、むしろその最中、そしてその後に続いてく現実を私たち視聴者に提示している。この世のすべての妊娠が、幸せだけに包まれた夢物語ではないという、厳しさを教えてくれる。

 ところで、四宮のもとに先週現れた謎の女のことは皆さん覚えておいでだろうか。今週は、四宮とその女の密会が描かれた。「コウノドリ」は真剣に命と向き合うドラマであり、そんなことで心乱されるわけにはいかないが、ここで落ち着いて四宮と女の会話を振り返ってみよう。

四宮「体調はどうだ」
「はい、いたって元気です」
四宮「ならよかった」
「四宮先生……正式に離婚しました」
四宮「そうか」

 ……いやいや、これが落ち着いていられるかー! と、やきもきする一幕だったが、今週は残念ながらここまで。本作プロデューサーは揃って、言わずと知れた大ヒット作「逃げるは恥だが役に立つ」を担当した峠田浩(たわだ・ゆたか)氏、那須田淳氏であり、この勿体ぶった星野源の見せ方は確信犯に違いない。

 そういうわけで、しつこいけど今週も言わせてください。四宮先生、あの女は誰ですか、と。

西野由季子(にしの・ゆきこ)(Twitter:@nishino_yukiko) フリーランサー。東京生まれ、ミッションスクール育ち、法学部卒。ITエンジニア10年、ライター3年、再びITエンジニアを経て、永遠の流れ者。新たな時代に誘われて、批評・編集・インタビュー、華麗に活躍。

2017年10月24日掲載

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