北朝鮮が日本に突き付けた課題――「核の傘」は守ってくれない

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「核の傘」は日本を守ってくれない――京都大学名誉教授・佐伯啓思(下)

 もともと日本にとって“拉致問題”であったはずの北朝鮮問題は、日米同盟、そして核拡散を認めないアメリカの戦略と切り離せないものとなった。京都大学名誉教授の佐伯啓思氏が、日本人が直面する本当の危機を説く。

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 安倍首相は、国際社会が一致して圧力をかけて、北朝鮮の核開発を停止させなければならない、という。それはそれで必要なことで、北朝鮮への国際的圧力が高まればよい。しかし、実際には「国際社会」という名の何かがあるわけではなく、また、足並みがそろうとも思えない。日本、アメリカ、韓国でさえ、それぞれの利害や関心は異なっている。

 ましてや、中国、ロシアとなれば、事情が大きく違ってくる。中国もロシアも、北朝鮮が崩壊するよりは、時々、問題を引き起こしてアメリカを刺激するこの暴れん坊をそのままにして、利用価値を維持したいところであろう。ロシアのプーチン大統領が米朝の調整を仲介する可能性はあるが、それも、北朝鮮を利用して、いわばアメリカに貸しを作ろうという魂胆である。中露ともに関心があるのは、対米力学だけといってよいだろう。そのためには北朝鮮という「緩衝地帯」は必要なのである。

 したがって、「国際社会の一致した圧力」に期待したところで、ほとんど裏切られる。とすれば、軸になるのは、やはり「日米同盟」ということになる。

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