北朝鮮とアメリカ、そもそも何をめぐる対立? 日本が置かれた立場とは

韓国・北朝鮮週刊新潮 2017年10月12日神無月増大号掲載

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「核の傘」は日本を守ってくれない――京都大学名誉教授・佐伯啓思(上)

 戦争と安全保障の形態が変わってしまった。日本もアメリカも北朝鮮もべつだん領土的野心があるわけではない。歴史上、開戦理由の大半を占めてきた“領土問題”はここにはない――保守思想界の重鎮が説く、今、日本人が直面している本当の危機とは何か――。

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 北朝鮮によるミサイル発射が立て続けに行われている。8月29日は飛行距離が約2700キロの中距離弾道ミサイルが発射されたが、9月15日には、飛行距離3700キロのミサイルである。先のものと同型の中距離弾道ミサイル「火星12」とみられている。

 日本上空を通過するミサイル発射は今回で6回目となり、今年に入ってのミサイル発射は15回。しかも、9月3日には6回目の核実験が行われた。9月15日のミサイルは、北海道上空を越えて太平洋に着弾したが、角度を90度ほど南に向ければグアムの米軍基地まで届く距離である。9月3日の核実験で使用された核爆弾の威力は広島へ投下された原爆の10倍と推定されている。来年9月は建国70周年になるので、さらなる「国威発揚」となろう。

 挑発にしてはいささか度が過ぎている。しかも、確実にミサイルの性能は向上し、核爆弾の威力は増している。北朝鮮が、アメリカの主要都市にまで届く大陸間弾道弾(ICBM)を開発し、そこに核弾頭を搭載できる技術を確立するのは時間の問題になりつつある。

 この脅威を前にしてアメリカも日本も韓国も打つ手がないという状態だ。トランプ大統領は例によって威勢よく、武力攻撃も辞さずといっているが、実際には、多大の犠牲を出してまでの軍事行動は避けたいところで、とりあえずは暫定的な合意でおさめて、問題を先送りしたいだろう。しかし、そのためには核開発停止は最低条件であり、北朝鮮がそれを飲むとは思えない。かくして、現状は、北朝鮮のやりたい放題ということにあいなった。

 実際、核開発の停止と北朝鮮の体制保証を交換条件とした妥協がなされたとしても、北朝鮮が本当に核開発を放棄するなどとは誰も考えていない。時間がたてばたつほど、北朝鮮の核ミサイルに関する技術は高度化するだろうから、当面の話し合いによる戦争回避が、本当に最善の解決策かどうかもわからないのである。

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