3季ゼロ勝の松坂大輔 それでも斬れないソフトバンクの苦悩

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 擬人化された自動車たちが登場するディズニーアニメ「カーズ」。この夏封切られた「カーズ/クロスロード」は、カーレーサーとして栄華を極めた主人公が所属チームに引退を迫られるというストーリーだ。子供向けのキャラに似つかわしくない、むしろ中高年に突き刺さるシリアスなテーマである。

 さて、この男も栄華を極めたクチだが、チームはなかなか引退勧告に踏み切れないらしい。

 メジャー56勝の松坂大輔(37)が推定年俸4億円でソフトバンクと契約したのは2014年オフ。まもなく3年契約が切れるのだが、彼がこの3年で一軍のマウンドに立ったのは、昨季最終戦の一度きり。投球数わずか39球だから、1球当たりの給料は3000万円超。しかも、1回5失点の大炎上だった。

「元々、12球団随一の戦力を誇るソフトバンクは、松坂を戦力として獲った訳ではありません」

 と大手紙デスクが語る。

「活躍してくれるに越したことはないのですが、最大の主眼は、将来の監督候補としてツバをつけておこうということ。そのためには、彼に気持ちよく身を引いてもらう必要があるわけですが、ご当人には引退する気なんてさらさらないんです」

 最近、浅田真央や木村沙織、宮里藍など、周囲に惜しまれつつも爽やかに引退するアスリートが目立つが、

「球界では逆に“ボロボロになっても続ける美学”が蔓延しています。50歳まで現役だった山本昌(中日)あたりからですかね」

 最近では岩瀬(中日)などもその一例。功労者ゆえ球団側からクビは宣告し辛いだろうが、それは本人が引き際を知っているという前提があってこその話だろう。

「松坂の活躍で初代WBC優勝監督となった王さんが球団会長というしがらみもありますし。本人が辞めると言わない限り契約を延長するしかありません。ただ、いくら金満球団とはいえ、あまり高額で更改しては、他の選手に示しがつかない。彼のプライドを傷つけずにどこまで年俸を下げられるか、見ものですね」

 ちなみに、件(くだん)の映画の結末は、主人公が復活するなんて陳腐なオチではなしに、ハッピーエンドとなっている。彼と彼の球団幹部におすすめの映画なのだが……。

週刊新潮 2017年10月12日神無月増大号掲載

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