東芝メモリ売却、矢面に立つ“再建屋”杉本勇次

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未知の領域

 東芝メモリ買収では出鼻を挫かれたかっこうの杉本氏だが、投資ファンド業界でその手腕は高く評価されている。

「慶応大学卒の杉本さんは三菱商事入社後、経営不振だった新生銀行や日本コロムビアを再生させたリップルウッド・ホールディングスに出向して投資ファンドの基礎を学んでいます。その時に培ったノウハウと人脈を生かして、2006年にベインキャピタル日本法人を設立して代表に就任しました」(先の記者)

 日本法人の代表就任後、杉本氏は積極的に経営不振の国内企業を買収し、再生を手掛けてきた。東京商工リサーチ情報本部の原田三寛部長によれば、

「杉本さんは、これまでファミリーレストランのすかいらーくを初め、ドミノ・ピザジャパンや大江戸温泉、雪国まいたけなどを買収しました。しかも、その多くの企業で代表取締役として経営に携わり、再建に成功しています」

“再建屋”としての経験は申し分なさそうだ。が、今回は扱う規模が違う。杉本氏を知るファンドマネージャーはこう懸念を口にする。

「投資家に多大なリターンをもたらしている杉本さんは、超一流のファンドマネージャー。ですが、東芝メモリの売却は多くの企業の思惑が錯綜する一方で、東芝とウエスタン・デジタルとの係争の結果次第では白紙になりかねない。多くの企業の再生を手掛けた彼にも、今回は“未知の領域”。果たして、これまでの経験が通用するかどうか」

 残された時間は、それほどない。杉本氏が「日米韓連合」をまとめきれなければ、東芝の上場廃止は確実だ。

週刊新潮 2017年10月12日神無月増大号掲載

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