「若山富三郎」の女性しかいない“大奥”事務所 息子語る

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全員「お手つき」!?

 以来、付き人として騎一郎氏は父親に寄り添うように2年間を過ごすが、

「若山企画にいたのは、30代後半の東洋風美女の女性社長以下、お弟子さん、お手伝いさんと皆女性ばかり。20代から50代まで5~6人いました。しばらくすると彼女達の関係性が浮かびあがってきて、どうやら、そのほとんどが『お手つき』であることがわかってきました。以前、関係があったり、関係が続行している人もいたり。それは、まさに大奥ですよ。親父は突然、スタッフの一人と私の目の前でキスをするなんてこともありました。こちらはぎょっとしますが、そんなのお構い無しです。お手伝いさんのなかには、“あたしは知ってるんだけど、先生のおチンチンはねえ……”なんて、いきなり話しだす人もいました」(同)

 そんな「大奥」で騎一郎氏が最も閉口したのは、“女達の闘い”だ。

「そこにはいろんな派閥があるんですよ。たとえば時々、お手伝いさんが、私に対する社長の対応について“あんなの、気にしないでいいのよ”なんて言う。はじめは私の味方として、善かれと思って言ってるのかと思ったんですが、あれは女性同士の暗闘でしかなかった。おそらく息子である私を派閥に懐柔しようとしてたんじゃないでしょうか。それぞれがいろいろ悪口を言っていましたが、標的にされやすかったのは、社長ですね。彼女はお金を握ってますから、やっぱり風当たりは強い。そんな女性達が毎晩揃って夕食をとるんです」(同)

 甘いものまで苦くなりそうな呉越同舟の食卓を囲んだ後、騎一郎氏は夜8時頃には、父の自宅兼事務所を出て帰路についたという。もっとも、

「どういうわけか、女性スタッフ達は皆いつまでも残っているんですよ。それぞれ家はあるんだから、自宅には帰っていたんだと思うんですが、それまで一体なにをやっていたんでしょうね」(同)

 若山をめぐり、互いに警戒。こんなにらみ合いが毎夜、続いていたということか。そんな彼について、実弟の夫・勝新太郎とともに、若山の最期を看取った女優・中村玉緒氏はこう語っている。

「一度、お義兄(にい)さん(若山富三郎)が私に服を買ってやろうということになったんです。帝国ホテルのアーケードのお店に行きました。そこで、1時間くらいゆっくり品物を見定めて『これはダメだ』『あれもダメだ』と丁寧に見立ててくれたんです。主人(勝新太郎)だったら即座に『これを着なさい』ですよ」

 勝新を引き合いに出し、

「主人はよく、“お兄ちゃんはいいなあ”と言っていました。それは“なにしろお兄ちゃんは、右腕、左腕、右脚、左脚と、それぞれ別の女の人にマッサージしてもらえるからなぁ”って。私は主人との結婚の条件に“絶対に女の人のお弟子さんはとらない”ことを約束してもらい、その言葉通りに勝プロは男所帯だったんです。だから主人はお義兄さんが羨ましかったんでしょうね」(同)

 亡くなったその日も、麻雀卓を囲み、かつてキスシーンを演じた相手である清川虹子と、どちらが先に相手に舌を入れたか笑って話していたという若山。実弟らに見守られて終えた62年の生涯は、実に艶っぽく濃密な人生だった。

週刊新潮 2016年8月23日号別冊「輝ける20世紀」探訪掲載

ワイド特集「20世紀最後の真実 伝説となった『偉人』『怪人』列伝」より

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