「野際陽子」逝去 “俺はからめ捕られちゃったの”千葉真一が明かす出会い

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■酒の横綱

「信じられないかもしれないけど、ほとんど夫婦喧嘩はしなかった。ホントだよ。陽子ほど男をうまく操る女はいないね。俺の性格を知っていて、接し方がうまいんだね。

 俺が機嫌が悪いとコロッと違うことを言って、笑わせたりするんだよ。

 バカさ加減が面白い。例えば、俺、陽子が俺の前に付き合っていた男を全部知ってるんだよ。何でって、陽子がしゃべるからさ。『この人』とは言わないよ。『この国の人』って。彼女は海外に留学していたからね。で、一部始終をベラベラしゃべるんだよ。あんまり言うから、『陽子、お前、そういう話を平気で俺にするけど、どんなに傷ついているのかわかってんのか!』と言うと、『あっごめんなさい。やっぱり傷つく? でも時効だから』。そりゃお前にとっちゃそうだけど、こっちは初めて聞くんだから! でもカラッとしているから、不思議と嫌味には聞こえない。『ま、いいか』で許せちゃう。だから喧嘩にはならないんだよ。

 それに酒豪でね。芸能界で『酒の横綱』と言われていた。俺の3〜4倍は呑んでいたよ。ワインが好きで軽く一本は空けていたな。一度、同じペースで呑んだら、ベロベロになって帰りのタクシーでやばいことになった。『あなたはお酒弱いんだから考えて呑まなくちゃダメよ』と窘(たしな)められたけど、朦朧とする中、『じゃあお前は考えてるのか!』と突っ込んだよ。ある時、『何でそんなに強いんだ?』と聞いたら、『私、胃下垂だから酔いが回らないの』。それを理由に呑みまくっていた。でも、酔いつぶれたりは一切しない。取り乱すこともなかった。陽子は楽しい酒だったよ。

 俺、トイレで本を読む癖があるのよ。陽子が帰ってきて、俺の姿が見えないと、『あなた!』『あなた!』と言いながら、部屋中探し回るんだよね。ようやくトイレとわかって、コンコン、『いるの?』とノックしてくる。『そうだよ!』と怒ると、『何だクソか』。結局、あの人にかかると、全部笑いになっちゃうんだよな」

 ***

(下)へつづく

特集「俺をからめ捕った肉食系『野際陽子』 元夫『千葉真一』インタビュー!」

週刊新潮 2017年6月29日号掲載

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