大人気「うんこ漢字ドリル」への警鐘 “子どもの未熟な感性に迎合”

ライフ

  • ブックマーク

■“嫌なもの”に向かう行為

 元国立市教育長で教育評論家の石井昌浩氏も、こう警鐘を鳴らすのだ。

「『三つ子の魂百まで』です。このドリルで育ち、果たして自分の核となるものを持ち得るかどうか。品性のない大人に育ってしまわないか心配です。何でも『うんこ』を媒介にするのは、子どもの未熟な感性に迎合することに他なりません」

 さらに、全く正反対の観点から憂慮するのは、評論家の唐沢俊一氏である。

「机に向かうのが楽しくなるという点では、教育界に一石を投じたと思います。ただ、子ども時代の勉強とは概して“嫌なもの”に向かう行為でもあるはず。大人になれば、たとえ嫌でもつまらなくても、仕事ならば取り組まねばならない。勉強には、その“予行演習”という側面があります。今から楽しい勉強を身につけてしまうと、『楽しくないから働かない』という大人が増えないだろうか。そんな一抹の不安を覚えます」

 肥やしにも毒にも転じ得る異物とは、心して向き合わねばならない。

 ***

特集「84万部突破! 子供も大人も魅入られた『うんこ漢字ドリル』の社会的考現学」より

週刊新潮 2017年5月18日菖蒲月増大号掲載

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。