ホンダの社史には記されない、ヤマハとの「HY戦争」 原付バイク覇権争いの勝者は

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■ヤマハの敗北宣言

 それでも、ホンダは追撃の手を緩めなかった。

「国内はシェア1位が保てればよかった。ホンダの収益の8割は米国。ヤマハも同様だった。米国でホンダが売れれば、その分ヤマハの資金源は断てる」(入交)

 宣戦布告は勇み足だったと振り返るのは、ヤマハの技術者・笠英二郎。

「タマも金もないのに実行した真珠湾攻撃のようなもの。そこへホンダが物量作戦でやってきた。ミッドウェー海戦ですよ」

 58年、年頭の会見でヤマハの小池社長は、「ホンダさんの商品開発、販売力にはとうてい太刀打ちできない」と発表。事実上の敗北宣言だった。

 2月10日、自動車工業会の一室で、ホンダ河島社長とヤマハ小池社長との会談が設けられ、和解する。

 だがすでにヤマハは国内在庫50万台、海外を含めた総在庫は100万台。売上は前期に比べ1000億円近く落ち込み、経常利益は過去最高の146億円から2億円に。設備投資の負担増、在庫、運転資金などの長短借入金は2500億円超(連結ベース)に及んだ。

 小池社長以下9人が退任、降格となり、ヤマハは経営の立て直しを急いだ。

 対して、ホンダは売上は1兆7500億円、経常利益は過去最高の506億円。

「表面的にはホンダの圧勝ですが、国内でホンダは販売店のリベートに200億円、設備投資には2年で500億円以上も費やした。アメリカホンダからの配当収入で賄っただけ」(佐藤)

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