30代「東芝」社員の転職日記 “合コンにも呼ばれない…”“見合い写真も来なくなった”

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■両親に心配される

――だが、そんな淡い期待はいとも簡単に打ち砕かれた。綱川智社長が12月27日の記者会見で、新たに数千億円の特別損失発生を公表。原因は、米国の原発子会社ウェスチングハウス(WH)が2015年12月に買収した、原発施設建設会社「CB&Iストーン・アンド・ウェブスター」の損失額が予想より大きいと判明したからだった。

12月27日・火曜日 絶望的だ。一体、何が起きたのか。半導体の儲けが一瞬にして吹っ飛ぶ。これまで社内では、原子力を始めとしたエネルギー関連は花形部門といわれてきた。そこにいる技術者たちもプライドが高く、鼻持ちならない連中が少なくない。だが、今回の件は絶対に許せない。子会社が買収したとはいえ、1万、2万円の買い物じゃないだろう。事前に損失額を見抜けなかったのはなぜか。怒りが収まらない。“倒産”、“失業”が他人事でなくなり、入社して十数年で初めて“転職”という文字が頭をよぎる。帰宅途中、知らぬ間に涙が……。転職サイトへの登録を決意する。〉

――この日の東芝株は391円60銭だったが、原発子会社の特別損失発生の影響で下落を続け、12月30日の大納会では283円10銭まで値を下げた。年初来高値の475円を考えれば、15営業日で実に約40%も下落した計算になる。

2017年1月2日・月曜日 実家に帰省。両親が会社の行く末を心配している。“会社が倒産することはないのか”とのストレートな質問には、答えに窮した。一方、親戚たちとも顔を合わせたが、無難な話ばかりで会社のことには触れず。なぜか、甥や姪がお年玉をくれといってこない。彼らも気を使っているのか。一昨年まで、帰省するたびに“会うだけでも”と言われてお見合い写真を何枚も見せられたが、今回は何も言われず。実家にいるのがいたたまれなくなり、仕事があると嘘をつき、予定より1日早く東京へ戻る。〉

1月10日・火曜日 昨年末に公表したWHの特別損失について、金融機関向けの説明会が開かれた。上司の話では、メインバンクのみずほ銀行と三井住友銀行はともかく、複数の地方銀行が融資継続に難色を示しているという。

 転職サイトへ登録して2週間ほど経つが、セミナーの案内ばかり。技術職の同期と違って、個人的なオファーはゼロ。焦るが、一方で“まだ、会社は大丈夫”という気持ちもないわけではない。〉

 ***

(下)へつづく

特集「『合コンにも呼ばれない……』『見合い写真も来なくなった』 『東芝』30代社員のトホホな『転職活動日記』」より

週刊新潮 2017年4月13日号掲載

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