アウンサン・スーチー、政権奪取から1年 ブーイング噴出

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強気の“姫”だが……

 あの熱狂はどこへ行ったのか――。

 アウンサン・スーチー氏を実質的な元首として国家顧問にいただく「文民政権」の発足からちょうど1年を迎えたミャンマーでは、逆にスーチー氏への不満や批判が次々に噴き出しているという。

「旧軍事政権の政治的影響力を保障する現憲法の改正、少数民族との和平、外資の積極導入など、公約に掲げていた案件はほぼ山積みのままですからね」

 そう指摘するのは、東南アジア情勢に詳しい獨協大学の竹田いさみ教授。

 スーチー氏への期待値が高かっただけに、失望感は深い。

「しかし、そもそも期待する方が無理な話。スーチーさんにも民主化後の展望まではなかったのが現実で、ミャンマーという国の社会構造からいっても軍と仲良くする他ないのです」

 そんな現実を裏付けたのが、この4月1日に行われた国会議員補選。スーチー政権与党のNLD(国民民主連盟)が12議席中8議席を獲得し、とくに都市部では圧倒的勝利だったものの、地方では現有議席を1つ失った。さらに、今回初めて選挙が実施された東部のシャン州では少数民族政党に2議席を独占されたのだ。

「予測できたことですよ」

 と話すのは『本音でミャンマー』の著者でジャーナリストの寺井融氏。

「“とにかく軍政を終わらせたい”という一点だけで人々が結集し、誕生したのがスーチー政権です。積極的な支持ではなく、自民党への反発から誕生した日本の民主党政権のようなものですね。だから、都市部でも民主化運動当時の学生グループ出身者がNLDから飛び出して新党を作っていますが、これもある意味で予定通り。ミャンマー人は、130以上ともされる多民族のせいもあるのか、党派づくりがとても下手なんです」

 これでスキャンダルでも発覚すれば、韓国につづく“姫”の凋落である。

週刊新潮 2017年4月13日号掲載

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