塩野七生が説く「トランプ」対処法 見事だった“シュワちゃん流”

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■塩野七生『ギリシア人の物語II』刊行!「トランプ時代」の日本の針路(2)

作家・塩野七生さん

『ギリシア人の物語』第2巻を上梓した作家・塩野七生さんが、この「トランプ時代」に我が国がとるべき針路について語る。2回目となる本稿では、EUやNATOなど、近年その存在位置が揺らぎ始めている「国の結びつき」に関する質問に回答をもらった。

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――アテネ率いるデロス同盟とスパルタ率いるペロポネソス同盟は、20世紀の冷戦構造下の北大西洋条約機構(NATO)とワルシャワ条約機構(WTO)を思わせます。トランプはNATOだけではなく北米自由貿易協定(NAFTA。加盟国=アメリカ、カナダ、メキシコ)に対しても批判的です。各国が結びつきを深めるときに大切なことは何なのか、いま改めて考える機会ですね。

塩野「古代ギリシアの同盟と現代ヨーロッパの同盟を同じ視野に入れるのは可能でも、両者の単純な比較は成立しません。歴史はくり返すけれど、同じ形ではくり返さないからです。

 しかし、古代と現代という2500年の歳月をへだてても、同盟はなぜ結成されたかという、根本のところでならば比較は可能です。根本とは、加盟各国の利害が共通していたということ。

 利害が共通しているとの思いが共有されている間は、同盟は機能します。だから問題は、共通していないと思い始めたとき。NATOやNAFTAにトランプが突きつけたのも、利害はもはや共通していないということだった。

 でもこれも、長期的視点に立って冷徹(クール)に現実を見さえすれば、どの同盟にも利害の共通点は必ずあることがわかるはず。頭に血がのぼった状態では、それが見えないだけなんです。

 連日何かと話題を提供してくれるからマスコミには好都合でも、トランプ氏も困った人ですよね。こういう人への対処法としては、アーノルド・シュワルツェネッガーのコメントが最も的を射ていた。

 トランプが言ったらしいんですよ。オレはテレビで高視聴率を取っていたけれど、シュワルツェネッガーの番組は低視聴率にあえいでいたと。

 それにわれらがシュワちゃんは、見事に切り返したんですね。『これはグッドアイデアだ。トランプがテレビにもどって来て、ボクがホワイトハウスに行けば、世界中が安心して眠れるようになるだろう』。

 日本人も、シュワちゃん流で行けば、無用な心配などしないで済むと思いますよ」

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