大阪で辛酸「三越伊勢丹」新社長 逆風続く業界

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 改革の船頭役が電撃辞任。春の嵐のなか、荒波にもまれることになりそうだ。

 業界最大手、三越伊勢丹ホールディングス(HD)が大西洋社長(61)の辞任を発表したのは、3月7日。石塚邦雄会長(67)から引導を渡された末のことで、事実上の“クビ”である。

 経済部記者が言う。

「百貨店離れが進み、大西社長は収益の柱を増やそうとブライダル業や旅行業などに手を付けました。目立った業績が出ないところへきて、赤字店舗を閉鎖する可能性を明かし、内部から反発を食らったのです」

 大西社長は、かつて人気店となった、伊勢丹新宿本店メンズ館の開店を主導して名を馳せ、2012年には三越伊勢丹HDの社長の座に就いたカリスマ的存在だった。一方、4月1日から舵取りをまかされたのは、同じく伊勢丹出身の杉江俊彦専務執行役員(56)だ。

「社内では“エリート君”と呼ばれています。11年に出店した大阪駅の三越伊勢丹を規模縮小する際、責任者として送りこまれました。いわば敗戦処理の“功績”が買われたと言われています」(同)

 大阪駅の店舗は、今年になってからも、さらに規模縮小が続けられている。さるエコノミストは、

「業界への逆風は続きます。若者には、ネット通販やユニクロに代表されるようなファストファッションが主流なので、社長を代えたからと言って、既存のやり方では浮上することはない。何かしらのイノベーションがないと地盤沈下が進むだけです」

 と言えば、流通業界に詳しい経済評論家の平野和之氏も次のように指摘する。

「富裕層はシニアに集中しており、三越に足を運ぶシニアも年々減っていきます。高級品、定価、高サービスにステイタスを感じる百貨店を支えた世代は、今後、減少していくため、改善するのは難しいでしょう」

 ライバルも“対岸の火事”ではない。

週刊新潮 2017年3月23日号掲載

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