「拉致問題は取り上げないほうが解決する」と主張した左派議員 自民党重鎮の明かした秘話
■北朝鮮を支援しようとする人たち
金正男氏の暗殺事件の全貌はいまだ明らかになっていないとはいえ、この一件を巡ってのリアクションは、北朝鮮という国家の不可思議さを改めて衆目に晒すことになったのは間違いない。
この様を見て、日本にとっての大きな目標である、拉致被害者の奪還が容易に進まないのもまたむべなるかな、と感じる方も多いことだろう。
自民党副総裁の高村正彦氏は、政治学者の三浦瑠麗さんとの対談をまとめた新刊『国家の矛盾』で、北朝鮮との交渉に関連した秘話を披露している。明らかにされているのは、北朝鮮だけではなく、国内の「親・北朝鮮」とも言うべき勢力の存在だ。以下、『国家の矛盾』から高村氏の発言を引用してみよう。
「私の外務大臣時代(注・小泉訪朝の4年前)に、国連から『北朝鮮で餓死者が出ているから人道援助しよう』という話が出ました。
私はだめだと言ったんです。
外務省の役人は『大臣が言っている“国交正常化なくして経済協力なし”というのは、国交正常化後の大型経済協力のことでしょう。これは国連のアピールに基づく人道援助だからいいんじゃないですか』と言っていましたが、私は『北朝鮮が拉致の存在すら認めていないときに人道援助を行ったら北朝鮮が誤解するおそれがある。北朝鮮は拉致の問題にほっかむりしたままで国交正常化による経済協力をとりたいと思っている。だから、たとえ人道援助にしても協力はだめだ』といって、私が外務大臣時代には出しませんでした」
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いつのまにか被害者が帰国?
「私が『拉致問題の解決なくして国交正常化なし、国交正常化なくして経済協力なし』と言ったとき、社会党系のかなり有力な議員からこんなことを言われました。
『高村さん、朝鮮民族というのはとても誇り高い民族だ。拉致を認めろと言ったって認めるわけがない。だから、そんなことを言わないで国交正常化したほうがいい。国交正常化したら、拉致されたはずの人がいつの間にか東京の街を歩いているかもしれない』と言ったんです。(略)
誇り高い民族ならそもそも拉致なんてしないと思うんだけど……。
『あなたみたいな有力な人がそんなことを言ったら、北朝鮮は拉致にほっかむりしたままでも経済協力をとれると思うかもしれないじゃないですか。そうしたら拉致問題の解決が遠のくばかりだ』 といって反論したんですけど」
社会党議員が主張したように、かの国に「善意」が通用するかどうか。その答えはすでに明らかだろう。