男の育休はこう取るべき 子どもの誕生から2週間“男の産休”でパパトレを!

ライフ 2016年10月21日掲載

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『フランスはどう少子化を克服したか』の著者高崎順子氏

■出生率アップと「男の育休」

 少子化に苦しむ先進国から、世界的な「子育て大国」へ。
 過去10年間、一人の女性が生涯で産む子どもの平均数(合計特殊出生率)を2・0前後に保ち、みごと少子化対策に成功したのはフランスだ。そのカギとなったのは、政府による手厚い子育て支援策だった。
 そのひとつが、男の育休ではなく、「男の産休」である。
 日本でも育休を取得する男性がじわりと増えているものの、その取得率はわずか2・65%(過去最高値、2015年)に留まる。だが驚くことに、フランスでも男性の育休取得は2%に過ぎないという。日本と大きく異なる点は、フランス人男性は「産休」を取得していることだった。

 パリ郊外で2児を育てるライター、高崎順子さんはこう解説する。
「フランスで男性が育児をするのは当たり前なので、イクメンに当たる言葉は存在しません。ただ、彼らだって最初から育児する父親ではありませんでした。こちらでは『男を父親にする』制度が意識的に設計され、社会に浸透しています。その代表が、子どもの誕生後に2週間取得できる『男の産休』。短期集中合宿よろしく、パパ・トレーニングを行う期間です」
 
 育休ではなく、誕生直後から取る産休がカギになるようだ。日本では一般的に、女性の産休は出産予定日の6週間前と出産翌日からの8週間と定められているが、「男の産休」は子どもが誕生した日から始まるのがポイントだ。
 ではこの2週間はどんな「休み」になり、どんな意味があるのか。高崎さんの新刊『フランスはどう少子化を克服したか』から抜粋・引用してみよう。

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 赤ちゃんの誕生後、サラリーマンの父親には3日間の出産有給休暇があります。取得率はほぼ100%。フランスでの出産入院は通常3泊4日程度なので、経過が良ければ、妻の入院中の時間をまるまる一緒に過ごし、退院にも同行できます。
 この3日間が、お父さんトレーニングの本格的な第一歩。沐浴やおむつかえなど、入院中に助産師指導で進められるスケジュールは、父親の来院時間に合わせて組まれていきます。目標は退院時、父親も母親と同じくらい赤ちゃんのお世話をできるようになること。ミルク育児を選んだ家庭ではもちろん、ミルク作りや授乳のコツなども、父母が揃って教わります。
 出産有給休暇が終わった男性には、今度は11日間連続の「子供の受け入れ及び父親休暇」が待っています。二つの休暇を合わせた2週間が、一般的な「男の産休」です。
 父親休暇は2002年の施行からすばやく社会に浸透し、12年には新生児の父親の約7割が取得したといいます。取らない3割は時間に融通のきく自営業者が中心で、対象を公務員に限った場合、取得率はほぼ9割に達しているそうです。

■「赤ちゃんと知り合う時間」

 退院後、赤ちゃんを家に迎えてからの数週間は、親にとって文字通り手探りの時間。何もかもが初体験の連続で不安でいっぱい、とにかく赤ちゃんのリズムに合わせて過ごすしかありません。泣いたら授乳し、おむつをかえて、それでもダメならだっこであやして。次第に、その赤ちゃんのリズムや、好きなだっこのポジションなんかが分かってくる――この時期をフランスでは「赤ちゃんと知り合う時間」と言います。

 その大切な時間を一緒に過ごすことで、ときに笑いながらぶつかりながら、男女のカップルは父親と母親になっていくのです。

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 この「産休」を最初にきちんと取ることで、男たちは育児の大変さを知り、父親としての自覚を持つようになる。まさに最初が肝心というわけだ。

 フランス式の「男の産休」は、日本でも参考になる施策かもしれない。そもそも、長期間の育休はハードルが高く、すぐ実現できる組織は多くないことを2.65%という数字が示している。
 それならば、「子どもが生まれたら休んで、2週間で戻ります」という分かりやすい「産休」の方が、周囲も受け入れやすいのではないだろうか。
 日本の男性の多くは、子どもの誕生時に休むのはせいぜい数日だけ。当日しか休まなかったという人も珍しくはない。しかも休む目的は主に妻の体を労わるためや、退院の手伝いをするためであって、「父親になるため」ではない。
 しかし、「男の産休」を男性が「父親」の自覚を高めるための期間だとはっきり位置付ければ、夫婦と子どもとの新しい生活にとって大きなプラスをもたらす可能性は高い。
 もちろん、「2週間だって休むのは難しい。絵空事だ」という声もあるだろう。しかし、何らかの手を打たないで、少子化を解消するのは困難である。
 そしていまこの瞬間にも、生まれたばかりの赤ちゃんと出産したばかりの母親が、父親の存在と手を必要としているのだ。
 フランスが少子化を克服しつつあるのは、こうした具体的なアイディアを官民協力して実現したからなのである。

デイリー新潮編集部