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NASA重大発表で大騒ぎ! 木星衛星「エウロパ」に巨大な海洋生物が棲むか?

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 木星の衛星エウロパは、太陽系の惑星や衛星の中でも生物が存在する可能性が高いと言われる。あのNASAが、エウロパについて驚くべき発見を発表すると告知したものだから、世界中が大騒ぎに。映画の如く、巨大な海洋生物が棲んでいる可能性はあるのか。

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エウロパは3日半で木星を1周する(イメージ)

 そのニュースを聞いて、世界中のUFOハンターたちは色めき立ったという。

 NASA(米航空宇宙局)が、「木星の衛星エウロパについて驚くべき発表を26日(現地時間)に行う」と告知したのは9月21日のこと。すると多くのウェブサイトやSNSで、こんな情報が飛び交ったのだ。「ついに宇宙人が発見されたか」と──。

 むろん、NASAも騒ぎになることは御見通しである。すぐさま、公式ツイッターで「ネタバレ注意:エイリアンではない」と呟いたのだ。

 さて、実際に発表された「驚くべき発表」とは、どんな内容だったのか。

ハッブル宇宙望遠鏡(イメージ)

 ハッブル宇宙望遠鏡を使って1年3カ月にわたり調べた。その結果、エウロパの表面から約200キロの高さまで水分が噴出する様子を3回、観測したという。

 すでに、水の噴出は2012年に確認されている。山岸明彦・東京薬科大学生命科学部教授によれば、

「今回、噴出が3回確認されたことは、大きな進展です。前回はオーロラの調査で水蒸気が出て来る様子が1回見つかっただけで、どれくらいの頻度で水蒸気が出て来るのかは不明でした。しかし、今回は木星に映る影を観測するという前回とは異なる方法で、3回も噴出が確認できた。かなりの頻度で水蒸気が出ていることが明らかになり、エウロパをより詳細に調査する価値が裏付けられたのです。今後、無人探査機で調査すれば、噴出している水蒸気から成分を分析し、粒子を地球に持ち帰ることも可能です」

 そもそも、エウロパと聞いてもピンと来ない方もいるはずである。そこで渡部潤一・国立天文台副台長に解説してもらうと、

「木星にはたくさんの衛星がありますが、そのうちガリレオ・ガリレイが発見した、大きい4つの衛星をガリレオ衛星と呼びます。エウロパはその中で、木星に2番目に近い第2衛星です。表面は氷に覆われていて、クレーターが少ないのが特徴です」

長沼毅『生命の星・エウロパ』(NHK出版)

 氷の下には海がある。陸地はナシ。言わば、星全体が北極のような状態と考えれば分かり易い。地表の温度はマイナス170度程だ。『生命の星・エウロパ』の著者、長沼毅・広島大教授によれば、

「ただし、氷の厚さは場所によって違うものの、数千メートルから数万メートルはあります。氷の下に広がる海の深さは、100キロ程と言われており、地球上の海で一番深いマリアナ海溝でも11キロですから、かなり深い海です。エウロパ自体は、月より少し小さいくらいの大きさですが、星全体の水の量は、地球よりも多い」

 さすがにエウロパに人間が住むのは無理らしい。しかし、地球外生命を探すという観点で言えば、非常に注目されているという。

 14年に公開された「エウロパ」という映画がある。6人の宇宙飛行士がエウロパの探査に行き、巨大なタコのような海洋生物と遭遇。この生物の画像が、宇宙船からの最後の通信となる。飛行士たちは帰らぬ人となったが、地球ではこの生物の発見は歴史的偉業と称えられるという物語である。これは、あくまで映画の世界の話なのだろうか。

 渡部氏が続ける。

「水が液体の状態で存在することは、ほぼ確実視されています。表面を覆う氷の下に水があって、それが長い間安定している。ですから、私も生物が存在する可能性はあると思います。いるとすれば、多細胞生物まで進化しているのではないでしょうか。魚だっているかもしれませんよ」

 長沼教授もこう言う。

「バクテリアかアメーバのような微生物はいるでしょう。エウロパの海にどれくらいの酸素があるか分かりませんが、もし十分な酸素があれば、魚くらいはいるかもしれない。ただ、クジラのような巨大生物はどうでしょう。あれだけの生物を支えるには、その分他の生物が存在しなくてはならない。エウロパにそれほどの生物がいるとは思えません」

米国の惑星探査機「ボイジャー1号」(イメージ)

■チューブワーム

 一方で、意外な生物が棲息している可能性を指摘する。

「1979年、米国の惑星探査機『ボイジャー1号』が、第1衛星イオで火山の噴火を確認した。イオで火山活動があるということは、第2衛星のエウロパでも同じような火山があると考えられました。そして、奇しくも同じ79年、地球の海底火山で奇妙な生き物が撮影されました。そこには太陽の光が届きませんから、まず植物ではない。動物です。動物であるからには何か物を食べるはずだが、何かを食べている形跡が見つからない。そこで調べてみると、海底火山から出る火山ガスをエネルギーにして生きていることが分かりました。つまり、地球の中で、火山ガスさえあれば生きていける生物が発見された。それが『チューブワーム』です」

 この生物の発見と、エウロパには海底火山がありそうだという発見が結び付いた。そこから、エウロパにも生物がいるかもしれないという話が浮上したのだ。

 生物が誕生するためには、エネルギー源(火山)、水、有機物(動植物体を構成している物質)の3つが必要だというが、

「地球でも、太陽光に依存せず、水と海底火山からのエネルギーだけで生きている生物がいるのです。エウロパには水と海底火山があることが分かっていますから、チューブワームのような生物がいても不思議ではありません」(同)

 現状でエウロパに何らかの生物がいる可能性は高い。もっとも、どれくらいの量がいるかといえば、

「それはまだ想像もつきません。というのも、それを推定するには有機物の量が分からないといけない。エウロパの有機物の有無は未確認です。生物の3条件が揃っているのは、太陽系の中では地球と、土星の衛星であるエンセラダスだけ。しかし、エンセラダスは直径500キロと小さい。生態系があってもそれほど大きくはないでしょう。エウロパに有機物があれば、生物の存在に関しては、一気に最有力候補になります」(同)

 次こそは有機物の発見となるか。

「特集 NASA重大発表で大騒ぎ! 木星衛星『エウロパ』に巨大な海洋生物が棲むか?」より

  • 週刊新潮
  • 2016年10月6日号 掲載
  • ※この記事の内容は掲載当時のものです

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