三菱自動車、ユーザー補償進まず “お客様第一”主義はどこへ

ビジネス週刊新潮 2016年9月1日号掲載

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 遥か昔のことのようにも感じるが、三菱自動車工業(三菱自工)の燃費データ改竄が発覚したのはわずか4カ月ほど前のことだ。この不祥事に対して、三菱自工の益子(ますこ)修会長兼社長(67)は社是でもある“お客様第一”を掲げてユーザーへの補償を約束している。だが、補償は遅々として進まず、親会社になる日産自動車の顔色を窺うのに忙しい様子なのだ。

ユーザーに届いた手紙

〈当社製車両の燃費試験における不正行為の内容に関するご報告〉

 こんなタイトルの手紙が、三菱自工のユーザーに届き始めたのは8月初頭のことだった。差出人は三菱自工の益子会長兼社長で、A4二枚に不正を行った経緯と謝罪が綴られていた。全国紙の経済部デスクによれば、

「三菱自工は、『eKワゴン』や日産自動車向けに製造した『デイズ』など軽自動車4車種のユーザーに10万円、製造年度により小型車『コルトプラス』など5車種の所有者には3万円を補償すると発表しました。益子さんは支払内容を記した書類を顧客に郵送し、8月から支払いを開始すると明言しています」

 だが、三菱車を所有する都内在住の40代女性はこう憤る。

「うちの車はコルトプラスですが、お盆を過ぎても自宅には支払いに関する書類は届いていません。ディーラーに問い合わせても、“補償に関してはメーカーから何の説明もありませんし、我々も新聞報道などで知る程度。ですから、お客様が購入した車種が支払い対象車なのかはお答えできません。そもそも三菱自工とは別会社ですから、うちに聞かれても困ります”と言われてしまいました」

 そのディーラーは、「関東三菱自動車販売」。三菱自工の100%子会社で、国内販売部門トップの服部俊彦取締役がかつて社長を務めていた。

三菱自動車工業本社

■ユーザーより親会社

 益子会長兼社長の掲げる“お客様第一”は、ディーラーには十分に浸透していないようだが、三菱自工本体はどうか。

「ウソだと言われても仕方がないでしょう」

 こう語るのは、自動車専門誌の記者だ。

「日産自動車の関連会社で、『日産東京販売ホールディングス』という一部上場企業があります。三菱自工製の軽自動車『デイズ』なども販売していたので、燃料データ改竄が原因で販売停止に追い込まれました」

 自動車業界では、日産東京販売HDの今期4月~6月の第1四半期決算は苦戦が予想されていたが、

「蓋を開けてみると、純利益は1億7600万円で前年同期比5100万円増。純利益を底上げした特別利益3億3900万円が、三菱自工からの補償金だったのです」(同)

 日産自動車が、2370億円で三菱自工株34%を取得して“子会社化”を発表したのは5月12日で、三菱自工の日産東京販売HDへの補償金支払いは遅くとも6月末。つまり、益子会長兼社長は、ユーザーよりも親会社のディーラーを優先したことになるのだ。

 そこで三菱自工の広報部に話を聞くと、

「関東三菱自動車販売の対応は我々が指示したものではありません。ですが、お客様にご不快な思いをさせたのなら、それはすべて三菱自工の責任です」

 で、“日産”に優先して補償したことは、

「悪意を持って作為的に行ったわけではなく、手続き上の問題。“お客様第一”が言葉ばかりで実がないとのご指摘があれば、その通りかもしれません。真摯に反省致します」

 益子会長兼社長の手紙はこんな一文で結ばれている。〈今後とも、三菱自動車をご愛顧賜りますよう、何卒お願い申し上げます〉。