ホンハイ傘下のシャープ、大阪本社ビル買戻しは郭会長の“ご神託”?

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 当たるも八卦、当たらぬも八卦。そういってしまえば元も子もないが、“信じる者は救われる”と考える経営者も少なくない。8月12日にシャープを正式に傘下に収めた台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業のテリー・ゴウこと、郭台銘(かくたいめい)会長(65)は、合理主義者として知られる一方、意外にも“信じる者”なのだという。

 新たにシャープの社長に就いたのは、郭会長の“忠実なしもべ”戴正呉(たいせいご)副総裁だ。戴社長は社内メールで組織改革を明らかにする一方、7000人規模のリストラを示唆。同時に、ブランド力強化のために中国などの家電メーカーに売却したテレビ事業の権利を、買戻すと“宣言”した。それだけでなく、

「実は、本社ビルの買戻し交渉も行っているのです」

 こう懐疑的に語るのは、全国紙の経済部デスクだ。

「シャープは、再建策の一環で大阪市内の本社ビルとその正面にある田辺ビルを売却しました。売却先は本社が家具量販店大手のニトリで、田辺ビルがNTT都市開発。シャープは売却益148億円を計上している。買戻しは郭会長の意向ですが、売却先の2社がすんなり応じる可能性は低いと思います」

「シャープ」公式サイトより

 すでに、ニトリは難色を示しているというが、仮に応じたとしても、買戻し額はシャープの売値を大きく上回るのは必至だ。

「合理主義者として知られる郭会長が、損を出してまで本社ビルを買戻すとは思えない。社員を鼓舞するための社内パフォーマンスとしか思えません」(同)

 だが、郭会長を知る商社幹部によれば、

「確かに、郭さんは超が付くほどの合理主義者。ですが、実は非常に信心深い。土地の買戻しが、“関帝のご宣託”だったら、無理を承知で買戻しに動くのではないでしょうか」

■26歳の道士に心酔

 関帝とは、わが国でもお馴染みの『三国志演義』に登場する蜀の勇将・関羽が神格化されたもの。主(あるじ)の劉備に“忠実”に仕えたことが転じて、商売の神様として敬われ、世界各地に“関帝廟”が設けられている。中国・台湾事情に詳しいジャーナリストの高口康太氏がいうには、

「郭会長は、熱心な“関帝”の信者です。実父の出身地、本土の山西省には中国最大の“関帝廟”があります。3年前、そのご本尊が台湾各地を巡るイベントが行われましたが、その仕掛け人が郭会長。彼の枕元に関帝が現れて、“私も台湾へ行きたい”と語りかけたのがきっかけだとか」

 郭会長は本尊招致を実現するため、自ら山西省に足を運んで大枚を叩いた。その後、関帝廟から贈られたのが、『忠義仁勇、関公故里』と刺繍で縫い付けられた金色のマフラーだという。

「郭さんは、重要な場には必ずこの金色のマフラーをして登場します。4月2日のシャープの買収調印式でも身に付けていました」(先の商社幹部)

 郭会長が関帝と並んで帰依しているのが、鴻海本社と同じ台湾新北市内にある寺院の道士だという。

「それは武聖宮という寺院の玄微師父。わずか26歳ですが、風水師としても著名で、地元誌に“郭会長は心酔していて2人で長時間密談している”と報じられた。彼は、鴻海最大の工場の設置場所を“神のお告げで決めた”といっているが、玄微師父のご託宣だと囁かれています。例の金色のマフラーですが、風水で金色は財運アップの効力があるとされ、彼もそれを信じているのです」(同)

 外見からは窺い知れぬほど、信心深い郭会長。仮に、買戻しが“神のご意志”ならば本気ではないのか。

週刊新潮 2016年9月8日号掲載

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