【リオ五輪】女子バレー エース「長岡望悠」の指紋まで見てスパイクする技術

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 世界ランキング5位の女子バレーボールにも、メダル獲得の期待が寄せられている。12人の代表メンバーの中で、とくに注目を集めているのがサウスポーのウィングスパイカー、長岡望悠(みゆ)(25)だ。五輪出場をかけた世界最終予選でチーム最多の114得点を叩き出したエースだが、彼女はスパイクの時、ブロックする相手チームの選手の指紋まで見えているという。

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圧巻の強烈スパイク(※イメージ)

「長岡の武器は、打点の高さが3メートル10センチというスパイクです。アスリートに必須の柔軟性に富んだ筋肉に恵まれている上、肩の可動域が極めて広い。そのため、正面方向に打つストレートでも、角度を付けて打つクロスでも臨機応変にこなします。高校時代にはスパイクを打たれた対戦相手の選手がすぐにボールの落下地点を把握できず、茫然としていたこともありました」

 感慨深げに振り返るのは、大分県の強豪校・東九州龍谷高校のバレーボール部で長岡を指導していた相原昇監督(48)だ。

「しかも、彼女はスパイクする瞬間にブロックする手の位置を見てコースを変えて打つこともできるんです。いつだったか、“ブロックする相手の指紋まで見えるようになりたい”と言っていましたね」

 ネット前でセッターからのトスを受け、長岡がジャンプしてスパイクするまでの時間は1秒にも満たない。

「彼女はその一瞬の間にブロックを“抜く”のか“弾く”のかという打ち方の判断ができる。すでに指紋が見える境地に入っているのでしょう」

■高1にして日本代表レベル

 長岡が得点を量産する理由は他にもある。相原監督が続けて言う。

「びっくりするほどのジャンプ力を持っていましたね。入学直後に計測すると、身長は170センチほどなのに、スパイクの最高到達点は実に3メートル5センチ。当時の高校女子のトップクラスでさえ2メートル90センチがせいぜいで、3メートルを超えるのは日本代表レベルですよ。長岡はそんな高さを、高校1年生にして軽々と跳んでいたのです」

 現在、長岡のジャンプ力は垂直方向に79センチから80センチとされる。身長も179センチに伸びたこともプラスに働いて、いまやその高さは代表チーム内でもトップクラスである。日本チームは身長面で世界の平均から10センチほど下回っているそうだが、長岡はその致命的なハンデを十分補えるほどの跳躍力を持っていることになる。

 男子バレーボールの元日本代表選手、川合俊一氏が解説する。

「高く、遠く跳べるジャンプ力は男女を問わず、バレーボールでは最大の武器です。ジャンプの滞空時間が長ければ、それだけ相手を観察できますからね。同時にスパイクを打つタイミングを微妙にずらせるので、ブロックする方は相当やりにくいはずですよ」

 さらに川合氏は、サウスポーのメリットを強調する。

「実は、世界でも左利きの選手はそう多くはいません。ということは、各国とも普段の主たる練習は右利きを前提にしているわけですね。僕も現役時代にサウスポーがいるチームと対戦した時、予想外の方向にスパイクを打たれて“うわ、しまった!”と思った場面が何度もありました」

 長岡は五輪初体験。遥かブラジルの地に、指紋ならぬ自身の足跡を残せるか。

「特集 秘されたドラマ! 汗と涙の『日の丸』アスリート」より

週刊新潮 2016年8月4日号掲載

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