母は十年かけて少しずつ死んでいった。体中の機能が失われていき、やがて口を動かす機能が失われた。口が動かなければ食べられない。ある日、母のからだに直接栄養剤を送り込むための胃瘻の手術をし、その帰りがけに、中華料理屋で母のいない食卓を囲んだ。母が二度と食べることのなかった、あの餃子の味を、私は忘れることができないだろう。
あれは生きながら母を弔う通夜だった。母が少しずつ死に向かう間、私は突き動かされるようにして、濃厚に死の匂いのする現場に入り、『エンジェルフライト』で国際霊柩を、『紙つなげ!』で被災者の再生を描いた。...
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薬物乱用少女は「手の掛からない子」だった――家裁調査官があぶり出す真実
前回に続いて、家裁調査官の手掛けた事件を見てみよう。
家裁調査官は、捜査権や逮捕権などは一切持たない。地道な調査と、当事者とのカウンセリングだけを「武器」に、様々な問題の解決に当たるのだ。
相手が未成年の場合は、保護者とも面接をして問題の所在を明らかにしていく。
長く家庭裁判所調査官を務めた村尾泰弘氏村尾氏の新刊『家裁調査官は見た――家族のしがらみ』をもとに、薬物乱用少女のケースを紹介しよう。
マキコ(仮名)は17歳の少女だ。薬物を使用しながら自動車を無免許運転していた。...
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