国会でも批判の「パチンコ屋にATM」 設置会社に元財務省事務次官

社会週刊新潮 2016年7月21日参院選増大号掲載

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 厚生労働省によるとギャンブル依存症に苦しむ人の数は536万人(2014年)。人口比にして4・8%と世界でも突出して多い。背景にあるのは、パチンコ・パチスロといったギャンブル産業の存在である。なのに最近ではATMまで置いている店もあるという。これって、やりすぎじゃありませんか、元財務省事務次官殿。

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ギャンブルを煽っておいて、その尻拭いに消費税を上げるのだけは止めてもらいたい(※イメージ)

 都内のとある駅前のパチンコ屋に入ってみる。するとパチンコ台の手前にATM。見ている間に客が“軍資金”を引き出してゆく。世間では、ギャンブルで年金を使い果たした挙句、焼身自殺するなどのニュースが後を絶たないのに、心配になってしまうほどだ。

 このATM、調べてみると「トラストネットワークス」という会社が、銀行と提携して設置している。07年からパチンコ店に導入を始め、現在、全国で1087台が稼働中だという。

 一般社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」の田中紀子代表が言う。

「ギャンブル依存症のうち8割がパチンコ・パチスロによるものだとされています。にもかかわらず、業界がやっている対策は店内に“適度に楽しむ遊びです”というポスターを貼ることと電話相談ぐらい。それなのに、ATMまで置かせるなんて利益追求が度を越しています」

 実はこのATM、国会でも批判されたことがある。

「昨年の4月、共産党の大門実紀史議員が“人の弱みに付け込み、ギャンブル依存に引き込む悪徳商法だ”と追及したのです。それもあってか昨年9月、1日の引き出し上限額3万円、月額で8万円などの抑制機能が強化されました」(パチンコ業界誌記者)

■「何が問題なの?」

 だが、そんな弥縫策より、負けが込んで熱くなった客の目の前にATMがあること自体が問題ではないのか。しかも、この話には意外な人物が登場する。

「実はトラスト社は、親会社がIIJ(インターネットイニシアティブ)というインターネット関連企業なのです。社長は勝栄二郎氏。元財務省の事務次官です」

 勝氏といえば、財務省でも「10年に1人の逸材」と呼ばれ、消費税の再増税に道筋をつけたと言われた人物。退官後の去就が注目されていたが、4年前に畑違いのインターネット業界に転職したことで話題になった。ならば勝氏にその是非を伺いたいところだが、代わって会長の鈴木幸一氏に聞くと、

「ATMを置いたのは、客が消費者金融に頼ったりすることがないようにと頼まれたからで、消費者ローンを借りてパチンコをする人が減り、環境はよくなっていると思います。勝さんは真面目な方ですよ。ATM事業はうちに来てもらう前からやっていた事業だから関係ない。一体何が問題なの?」

 だが、先の田中氏が言うのだ。

「普通に仕事をしていても生活保護受給者になるほどパチンコにのめり込む人たちは沢山いるのです。金を使い果たした人が生活保護になった場合のコストや、パチンコの利益として吸い取られる年金などの社会保障費は馬鹿になりません。結局、税金として国民に押し付けられる。増税を押し進めた元官僚が関わるのは如何なものでしょうか」

 ギャンブルを煽っておいて、その尻拭いに消費税を上げるのだけは止めてもらいたい。

「ワイド特集 真夏の夜の夢」より