麻央の病状を伏せながら…海老蔵が見せた演技に「肝が据わっていて、別格でした」

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■「肝が据わっていて、別格でした」

 ところで、もとより海老蔵の演技には、

「感情と演技のバランスがずれて言葉が上ずってしまう。要するに、台詞に演技がついてこない」

「役作りが必要な演目なのに、極めて浅い解釈で演じてしまうことがある」

「滑舌が悪くて声が通らない。演技がくどくてメリハリがない」

 など、評論家らの批判がつきまとってきた。とはいうものの、2年弱に亘る苦悩が演技に影響しないわけがない。

「今年5月、尾上菊之助、尾上松緑とともに『菅原伝授手習鑑』の『寺子屋』の段を演じました。海老蔵の役所は、主君の息子を守るため自身の息子の命を差し出す舎人(とねり)。肝が据わっていて、別格でした」

 と評するのは、演劇担当記者のひとり。

「“でかしゃった、でかしゃった”と、打たれた息子の首を見て褒めるさまは圧巻。抑えに抑えた感情が一気にほとばしる。麻央さんの病にぴたりと寄り添い、このことが外部に漏れないよう、耐えてきた。その日々を経験したからこその演技だったと思います」

 図らずも先の会見で海老蔵は、

〈各々が忍耐のいる、悲しんだ1年8カ月だったんじゃないですかね〉

 と回想しつつ、こう付け足している。

〈辛かったけど、いつか、あの時間は大変だったけど、家族にとってはとても良い経験をしたという会話ができるように、それを夢見ている。振り返ることができる日を願って〉

 海老蔵をよく知る芸能プロ関係者は、

「すべてを受け止め、達観しているように映った。とりわけ、“夢見て”という言葉遣いを普段は一切しませんから驚きました。父親の團十郎が肺炎で亡くなったのは3年前。その際の記者会見での姿に重なるのです。海老蔵の脳裏にもそれがあったはず。もちろん、私の見方が杞憂であって欲しいと願っています。矛盾した物言いなんですが……」

 と肩を落とすばかり。

 邪気を祓うという成田屋のお家芸「にらみ」。運命の慈悲なき転回に対して、他ならぬこの神通力の見せ場に違いないのだ。

「特集 進行性乳がん『小林麻央』と『海老蔵』の秘密」より

週刊新潮 2016年6月23日号掲載

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