武田薬品がアイルランド人CFOを取締役にしないワケ 前任は“報酬泥棒”

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 企業のグローバル化で、外国人が“重役”に就いてもさほど驚くべきニュースにはならなくなりつつある。だが、武田薬品工業が発表した人事は製薬業界のみならず、経済界にも大きな波紋を呼んでいるという。

 フランス人のクリストフ・ウェバー氏(49)が社長を務める武田薬品は5月12日、HP上でこんな人事を発表した。

〈ジェームス・キーホー氏が2016年6月15日付で当社のCFO(最高財務責任者)として着任しますのでお知らせします〉

 アイルランド人のキーホー氏(53)は、一貫して財務畑を歩み、米国では企業財務のプロとして知られているという。武田薬品は、そのプロをシュガーレスガムの「リカルデント」で知られる米クラフトフーズ社から“ヘッドハンティング”したわけだ。

「極めて異例の人事です」

 こう驚きを隠さないのは、全国紙の経済部記者だ。

「キーホー氏は、武田薬品の取締役候補に名を連ねていないのです。一部上場企業で、財務の最高責任者が取締役でないケースは他に見当たらない。これでは単なる“財務部長”と変わりません」

 武田薬品が、他社から引き抜いた“逸材”を取締役に選任しないのはなぜか。経済誌の製薬担当記者がその謎を解き明かす。

「昨年まで武田薬品のCFOを務めていたのは、クリストフ社長と同じフランス人のフランソワ・ロジェ氏。社長の片腕と目されていた彼が、就任から2年足らずでスイスの大手食品会社ネスレに移籍してしまったのです」

 取締役だったロジェ氏の報酬は年間3億円。これでは“報酬泥棒”ではないか。

「これを知った創業家出身の武田國男元会長が、長谷川閑史会長を呼び出して激怒したと言われています。長谷川会長は、試用期間中にキーホー氏の“忠誠心”を見極めてから取締役に就任させようと考えているのでしょう」(同)

 キーホー氏も武田薬品で7社目の“渡り鳥”。前職のクラフト社にはわずか1年間しか在籍していなかったが、今回は大丈夫?

週刊新潮 2016年6月9日号掲載

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