三菱自動車だけじゃない…三菱重工が抱える8000億円の“超大型”原発訴訟

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 燃料データの改竄問題で、経営難に陥る三菱自動車を救えなかった三菱重工。その理由は、資源開発の失敗や豪華客船引き渡しの遅れによる損失が原因だと指摘されている。が、実はさらに大きな難問を抱えているのだ。

「実は、三菱重工は屋台骨を揺るがしかねない超大型の訴訟案件を抱えているのです」

 こう指摘するのは、経済誌デスクだ。

「2012年、三菱重工が手掛けた米国の原発で水漏れ事故が起きて廃炉になってしまった。そこで原発運営会社のサザンカリフォルニアエジソン社が、損害賠償を請求したのです」

 この事故については三菱重工も施工ミスを認めているが、賠償額は契約上の範囲内である1億3700万ドル(約149億円)の支払いを主張しているのに対して、エジソン社は“将来の利益”も見込んで75・7億ドル(約8251億円)を要求。両社の間には大きな隔たりがあるのだ。

「そこで双方が“司法”の判断に委ねることに合意して、昨年7月に国際商業会議所の国際仲裁裁判所へ“紛争案件”として持ち込みました。両社とも仲裁裁判所の決定を受け入れることを表明していますが、万が一、エジソン社の主張が全面的に支持されでもしたら、三菱重工の経営に重大な影響を及ぼす一大事にも発展しかねません」(同)

 先日、日産自動車が引き受けた三菱自動車の第三者割当増資は約2400億円。賠償額はその約3・4倍を上回る金額になり、三菱重工が“救済資金”を出せなかったことも頷ける。三菱グループのさる会社幹部が懸念するには、

「重工の2016年3月期連結決算の純利益は約638億円。仮に、こちらの主張が認められても、純利益のおよそ4分の1にあたる賠償金を支払わなければなりません。そうなれば資金繰りが厳しくなり、建造中の豪華客船ばかりか、初の国産ジェット旅客機・MRJの開発にはまだ資金が必要ですから影響は少なくないでしょう」

 三菱重工の命運を左右する“審判”は、早ければ年内に下る。

週刊新潮 2016年6月2日号掲載

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