清原裁判に見る対応 得点を稼いだ佐々木主浩、失点を防いだ桑田真澄

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 もはや、人生そのものがゲームセット寸前に追い込まれた同期の盟友・清原和博のため、公判への緊急登板を決めたのは佐々木主浩。ハマの大魔神が攻めの投球で評価を高めた一方、“KKコンビ”の桑田真澄は、我関せずを貫いて失点を防いだ。共に48歳の名ピッチャーは清原裁判に際し、互いの投球術を髣髴とさせる真逆の対応を見せていた。

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濃すぎる同級生

 5月17日、東京地裁の証言台に立った佐々木は、今回の証人出廷について、

「最初に彼から話を貰った時に即決しました。分かった、と。彼のために何かしてあげたいと思った」 

 被告人席では、左手にハンカチを握りしめた清原が顔を真っ赤に染めながら、必死に涙を堪(こら)えていた。

 佐々木の知人によれば、

「清原の証人になることは、妻の榎本加奈子にも相談せずに決めたようだ。もちろん、周囲の誰もが反対したが決意は固かった。佐々木は清原に、“球界復帰のためにも、まずは入れ墨を消せ”と説得しています」 

 全国紙の運動部デスクは、今回の証人出廷を評価する。

「清原の情状証人なんて明らかに貧乏クジですが、敢えて火中の栗を拾ったことで佐々木は株を上げた。その結果、球界の風向きも変わってきました」

 公判後、山本浩二・名球会理事長は、“佐々木さんが証人に立ち、更生して野球界で頑張ってほしいと言った。名球会も同じ思いだ”と清原の除名を否定した。

「名球会には、覚醒剤所持で実刑判決を受けた江夏豊や、トランプ賭博で逮捕された柴田勲も名を連ねている。初犯の清原は執行猶予が確実ですから、整合性をとるためにも除名は難しかった。佐々木の出廷で清原への風当たりが弱まり、名球会も助けられた」(同)

 往年の名ストッパーが、ここでも“火消し”にひと役買ったというワケだ。

■監督候補

 さらに、スポーツ紙記者はこうも言う。

「佐々木は以前から“監督になりたい”と公言していますが、古巣のベイスターズでは、メジャー行きを巡って首脳陣とぶつかったことや、榎本との不倫・再婚騒動が尾を引いて実現しなかった。ただ、来季以降、佐々木が監督候補に挙がる可能性は十分にある。また、仙台出身なので楽天からもお呼びが掛かると思います。何しろ、人事権を握る楽天球団副会長の星野仙一は、この手の男気エピソードが大好きですからね」

 佐々木本人を直撃すると、

「いやいや、裁判所で話したことが全てだから。あの一回で勘弁してくれ!」

 何にせよ、現役時代と同様、正面から力技で裁判を乗り切った佐々木。では、清原にとってもう一人の同期である、頭脳派ピッチャーはどうか。

「そもそも清原は、桑田に証人を頼もうとすら考えなかったでしょう。彼は物事を損得だけで判断するタイプ。仮に頼まれても自分の得にならないので引き受けなかったと思います」

 とは、野球評論家の有本義明氏である。

「桑田は清原から“もう俺に干渉しないでくれ”と言われたと話している。しかも、その言葉を受けてこれ幸いと関係を断ってしまった。公判後のコメントを聞いても清原の扱いはあくまで“他人”です。とても男気があるとは言えません」

 リスクを取って得点を稼いだ佐々木と、男を下げても失点を防いだ桑田。もちろん、清原が再びシャブに手を染めれば、佐々木も無傷ではいられない。

 投手戦の結末は、清原の会心の一打ならぬ、改心の一語に懸かっている。

「ワイド特集 酸っぱい経験」より

週刊新潮 2016年6月2日号掲載

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