中学受験をした子は自発性が育たず、知的好奇心が足りないのか? 〈子供に最良な受験時期は? 悩める親への完全ガイド(2)〉

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 育児・教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏が送る、子供の進路に悩む親御さんたちへの受験ガイド。中学受験をさせるか高校受験をさせるかは多くが悩むところだが、おおた氏はその選択のメリットデメリットを熟慮すべきだという。

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高校受験か中学受験か、子供のタイプにもよる

 今多くの親が心配しているのは、2020年度から実施が予定されている大学入試改革の行方だろう。これについて、3月25日に文部科学省の有識者会議が最終報告をまとめた。

 センター試験に代わって実施される新テストの仮称は「大学入学希望者学力評価テスト」。今春、中学2年生になった学年からが対象だ。これまでのマークシート方式に加えて記述式の問題も出題され、英語では聞く、話す、読む、書くの4技能をバランス良く評価する方針。英検やTOEFLなどの外部試験を活用する可能性もある。

 しかし未だに不透明な部分も多い。たとえばテストの時期。採点に時間がかかる記述式のテストだけ、時期を前倒しで行うことが検討されているが、実施日程の決定は先送りされた。


 その不透明感を嫌ってか、今年の首都圏の中学入試では、有名私大の附属校で倍率が上がるところが多かった(表1)。内部推薦で大学に進学できる確率が高いので、入試改革の混乱に巻き込まれなくてすむ。そう考える受験生や保護者が多かったと推察される。

 私大の附属中学は、関東では早慶およびGMARCH(学習院、明治、青山学院、立教、中央、法政)の系列、関西では関関同立(関西、関西学院、同志社、立命館)が人気だ。これらの附属校に、中学から入れるのであれば入ってしまおうというのである。

【表1】東京・神奈川の主な大学附属人気中学の倍率変化

■“中学受験文化”

 大学附属校は、中学と高校のどちらから入るのが楽だろうか。最終学歴の大学ブランドを決めることにもなるので、中学入試と高校入試それぞれの偏差値を比べて、入りやすいほうを選ぶ方法もあるだろう。だが、子供によって学力が伸びる時期が早かったり遅かったりするので、子供のタイプの見極めも大事になる。

 本来的には、中学受験とは、12歳から18歳という多感な時期を過ごす環境を選ぶこと。思い切って、中高大一貫の環境で「真のゆとり教育」を享受するのもいいのではないか。

 ただしこれは中学受験文化のある地域限定の、文字通り「贅沢」な選択肢だ。

 文部科学省の「学校基本調査」を元に作成した表2を見てほしい。国立と私立の中学(6年制の中等教育学校の前期課程を含む)に在籍する生徒の割合は、全国平均で8・4%。附属小からの内部進学者もわずかにいることを考えると、中学受験をしているのは約8%だと推測できる。

【表2】生徒数の割合(抜粋)

 地域差も大きい。近隣県からの通学者も多い東京は25%を超える。次に多いのがなんと高知で約20%。神奈川、京都、奈良、和歌山、広島も10%を超えるが、それ以外の地域では、高校受験で初めて受験を経験する人がほとんどだ。

 表2の高校の欄は、公立以外の高校に在学する生徒の割合にすぎず、このうち何%が高校受験をしたかまではわからない。2014年の高校進学率は98・4%なので、ここから中学受験や小学校受験で入学したと考えられる8・4%を引けば、約9割が高校受験をしていると推測できる。

 連載(1)の冒頭の例のように、自分が受けた教育が一番だと思い込む人は多い。高校受験経験者が多数派である以上、小学校のうちは塾に通わず、高校受験で頑張ればいいと考えがちだ。しかし最終的に高校受験を選ぶにしても、子供の成長にとって、その選択のメリットは何であるか、熟慮しておいたほうがいい。関西の進学塾の講師はこう説明する。

「中学受験をするなら、それはそれで得るものがたくさんあります。ただ中学受験では、親と塾の先生が力尽くで子供に勉強させれば、志望校合格という目標はなんとか達成できてしまう。でもそれが怖い。子供に受け身の態度が染みついて、本来育てるべき自発性や知的好奇心の芽を摘んでしまうことがあります」

 志望校に合格できても、そこで終わりでは困る。その講師はこう続ける。

「その点、中学受験をせずに高校受験で勝負すると決めた家庭であれば、小学生の時点から目先の学力にとらわれず、自発的に学ぶ力を育てることに時間を費やせます。親も焦らずに見守ることができます。それが中学受験をしないという選択のメリットです」

 逆にいえば、中学受験をしないのなら、その代わりに小学生のうちから、自ら計画を立て、自らの意志で勉強ができる子に育てるための工夫をすべきだということだ。それがスポーツでも音楽でもいい。しかし5年生、6年生になっても1日だらだら遊んでばかりでいいわけがない。

「特別読物 子供に最良な受験時期は小? 中? 高? 悩める親への完全ガイド――おおたとしまさ(育児・教育ジャーナリスト)」より

おおたとしまさ
1973年東京生まれ。麻布中高卒、東京外国語大中退、上智大卒。リクルートから独立後、教育誌等のデスクや監修を歴任。中高教員免許、私立小での教員経験もある。『ルポ塾歴社会』など著書多数。

週刊新潮 2016年4月14日号掲載