人工知能の普及で「医者」も「弁護士」も給料が下がる

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 人工知能「アルファ碁」が、4勝1敗で世界トップ棋士を圧倒。予想を超える速度で進化する人工知能は、近い将来、ほとんどすべての仕事を代替できるようになるという。データ処理、気象予報、株式相場予想……。そして、アートディレクター、画家、小説家、音楽家などの「芸術」職も例外ではない。

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教師や医師もAIに?

 ゴールドライセンスと呼ばれた医師や弁護士についても神戸大学名誉教授で『人類を超えるAIは日本から生まれる』の著者の松田卓也氏はこう言及するのである。

「医療現場でも、IBMのAI、ワトソンによる診断の正答率は、人間の医師を上回ったという結果が出ています。患者のデータをワトソンに入れると、どの病気に罹っている確率が何%で、候補となる治療法は何か、などと教えてくれるアプリケーションを、IBMは開発しました。ただ、人間は心情的に、ロボットに診断されたくないから、患者とコミュニケーションをとる医師はいなくならないでしょうが、医師を補助するAIが活用されるようになる。弁護士も同様で、アシスタント業務を行うパラリーガルという職種には、AIが使われるようになるでしょう。医師も弁護士もAIが持つ知識をもとに判断するようになる。今のように膨大な知識を獲得して難しい試験をパスする必要がなくなり、医師も弁護士も価値が下がって、給料は低くなるでしょう」

■“技術的特異点”はいつか

 ところで、進化を重ねた人工知能が、人間よりも頭がよくなってしまう時点は“技術的特異点”と呼ばれる。これまで、2045年ごろに訪れるのではないか、と言われていたが、

「私は自分の講演会で、よく会場の方々に“AIが人間を超えるのはいつになると思いますか”と聞きます。以前は“2040~60年”という回答が多かったのですが、最近は“2026~40年”と答える方が多い」

 そう語るドワンゴ人工知能研究所の山川宏所長自身、AIの進歩の加速を肌で感じているそうで、

「2050年以降はAIが進歩しすぎていると思われ、想像もつかない。ギリギリ想像できるところまで話すと、20年ごろまで、まだAIに代替されないのは、複雑な問題解決能力、意思決定、創造性、感情労働、そしてマネジメント業でしょう。その後、徐々にAIが代替し、50年ごろには、人間は自分専用の医師や弁護士、教師をAIで持っていることでしょう」

 なかなかイメージが湧きにくいが、そのころには、

「AIはメガネやコンタクトレンズのようにウェアラブル、つまり装着可能なものになって、人間の知力が増強されると思う。人間とAIが一心同体となり、他人からは、私自身が頭で考えているのか、AIで知力を増強しているのかわからず、知能指数100の人が200にも1000にもなれる時代が来るのです」

 と、前出の松田氏は肯定的にとらえる。とまれ、山川所長は、

「子どもたちは今のうちから、こういう社会ができるという心構えを持った上で、何を勉強するか、どんな職業に就くか、考えなければなりません」

 と、警告するのである。

■希望はあるのか

 さて、こうして、あらゆる職種をAIが代替するようになると、どんな社会が現出するのか。松田氏は、

「研究者の間には、働かずに遊んで暮らせるユートピア的な世界が来る、もしくは、人々の間の格差がひどくなるディストピアの時代が来る、という両極端な未来予測があります」

 と言うが、いずれに転んでも空恐ろしい、と感じるムキも多いのではあるまいか。だが、その検証は別の機会に譲るとして、ここでは公立はこだて未来大学システム情報科学部複雑系知能学科の松原仁教授の、次の言葉に希望を託すとしよう。

「人間の生活は産業革命をへて豊かになったはず。一時的に職を失した人がいても、それで終わらないのが人間の柔軟性です。人工知能も、その活躍で一時的に不満が生まれるかもしれませんが、AIのメンテナンスなど新たな職も生まれるはずだし、少子高齢化の下では、生産性を確保し、多くの高齢者を支える役割も期待できるのではないでしょうか」

「特集 『人工知能』は世界をどこへ導くか 第2弾 ほぼ全ての仕事はAIでまかなえる近未来」より

週刊新潮 2016年3月31日号掲載