バブルスターで一世を風靡「原ヘルス」社長が「香港に死す」まで

社会週刊新潮 2016年2月25日号掲載

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「美男美女にバブルスター!」。大物俳優たちが上半身裸で連呼するCMを覚えているだろうか。「原ヘルス工業」の故原全三郎氏(本名・善三郎)が超音波温浴器を引っ提げて現れたその時期、日本にはバブル景気が訪れようとしていた。だが、原氏の“バブルスター人生”は一足早く墜落する。

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 自宅の浴槽にぽんと入れる(あるいは据え付ける)だけで、ジャグジーのような泡風呂になる。そんな温浴器「バブルスター」の人気に火がついたのは1986年のこと。疲労回復に効果があり、神経痛、リウマチ、はては痔にも効くとうたった温浴器は派手な宣伝もあって大ヒットする。

 CMの費用は毎月2億。松方弘樹や梅宮辰夫、千葉真一といった銀幕のスターが毎日、「バブルスター!」と連呼した。

 その原氏が、温浴器を考案したのは、鳥取県・三朝温泉で養生していたときだという。早稲田大学在学中に学徒出陣、一命を取り留めて帰国後、這うように辿りついた湯で、

「酸素がこんなに美味しいものか」

 と気が付いて研究を重ね完成にこぎ着けたという触れ込みだった。だが、原氏の知人によると、

「その経歴は嘘。もともと原さんは印刷会社を経営しエロ本を作ったり、家庭の風呂で使えるラドン発生器を作ったりしていたけど、それほどうまくいっていませんでした」

 ヒットしたのも理由があった。当初、代理店方式で販売していたのを、ピラミッド型のネットワーク販売に切り替えたことだ。最高の「スーパーゴールド会員」は1台(平均16万円)売れるたびに50%以上のマージンが転がり込む仕組みである。

 長男の浩一氏が振り返る。

「当時、ジャパンライフや豊田商事系のネットワークビジネスをやっていたやり手がごそっとバブルスターに移ってきた。これで、一気に売り上げが伸びたのです」

 原ヘルスは、あれよあれよという間に売り上げ500億円を超える優良企業に変身する。巨万の富を手にした原氏は、高級住宅地に屋敷を構え、1億円以上するロールス・ロイスを乗り回した。“崩壊”の足音にも気が付かずに。

■今も販売中

 89年12月、原氏が設立した会員組織「ヘルシィバンク協会」が、訪問販売法違反容疑で捜査を受ける。次いで、原ヘルス本体の薬事法違反が発覚。バブルスターに使われていた浴用剤の成分が承認を受けていなかったのだ。さらに、同社が韓国に16億円もの小切手を不正送金していたことも報じられ、世間は不審の目を向けるようになる。原ヘルスは経営が悪化し、91年10月に不渡りを出してしまう。

「当時、会社の負債は170億円にのぼっていました。銀行からの借り入れは本社や社長の邸宅、工場などを売却し手形をやりくりしながら長い時間をかけて返済したのです。それもあって倒産だけはしなかった」(浩一氏)

 破綻を免れた原氏は再起を目指す。会員が離れ、手元に100万円もない日もあったが、化粧品販売会社に軸足を移し軌道に乗せた。だが、その矢先、終わりはあっけなく訪れる。

 08年10月、知り合いの結婚式に出席するために訪れていた香港で原氏は急死する。真夜中にホテルの風呂で倒れているところを妻が発見したという。血中からはなぜか睡眠導入剤が検出された。享年82。

 原氏が残した会社は妻が継いだが、知的財産を巡って一族が対立したままだ。「バブルスター」はそこで今も細々と売られている。

「60周年特別ワイド 『十干十二支』一巡りの目撃者」より