やさしいデータと数字で語る「フクシマ」の虚と実 雇用は激増 離婚は減少 出生率もV字で回復

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■人手不足の雇用市場

 ここまで1次産業について述べてきました。が、これについても誤解がひとつ。実は、福島の1次、2次、3次産業従事者の割合は、それぞれ7・6%、29・2%、60%(10年)。3・11後、「土や水、風とともに生きる福島の人々の生活が根こそぎ奪われてしまった」みたいなノスタルジックな言い方が散々繰り返されましたが、あまりにステレオタイプなものの見方です。

 では、その2次、3次産業はどうなっているのか?

 冒頭の(2)の問い=「直近(15年10月)の福島の有効求人倍率は、都道府県別で全国第何位か?」

 先に述べたように、答えは4位。数値は1・68倍。月によっては1位になることもあります。100人しか働き手がいないところに168人の求人が出ている状態です。つまり人手不足が起こっています。改めて言うまでもなく、背景にあるのは「復興需要による福島の雇用市場の活性化」です。

 むしろ福島の製造業にとっては、震災よりリーマンショック(08年)の方が影響が大きかった。事業者数、従業者数、新製品出荷額、付加価値額、いずれもリーマンショック後の方が、震災後よりも落ち幅が大きいのです。逆に、福島の13年の企業の倒産件数は、10年の0・35倍。3分の1の値です。

 3次産業のうち、もっとも原発事故の影響を受けそうな観光についての数字も見てみましょう。

「10年と比べて、福島県に観光客はどれくらい戻ってきている?」

 答えは「82%の水準まで回復している」(14年)です。原発のある「浜通り」は、やはり厳しく、6割弱の回復にとどまりますが、浜通りのいわき市にある「スパリゾートハワイアンズ」はかえって知名度を上げ、観光客を増やしています。「中通り」は9割以上、「会津地方」については、大河ドラマ『八重の桜』効果もあり、震災前よりも数字が伸びた時期もありました(14年は9割)。

 他方、問題なのは、修学旅行客の数字が伸び悩んでいること。福島を修学旅行で訪れた人の数は、10年度の67万3912人に対し、14年度は35万704人。回復は52%に留まっています。この動きを指摘すると「被曝を避けたい親の不安を軽視するのか」などともっともらしいことを言う人が出てきます。ですが、例えば、飛行機で成田―NYを往復した時の被曝量は100マイクロシーベルトほど。これと同じレベルの被曝をするには福島第一原発の真横を走る国道6号線を50回以上通り抜ける必要があります。海外旅行をした方が、福島に行くより遥かに被曝する。不勉強と事なかれ主義を、「不安」などという言葉で正当化すべきではありません。

 加えて、外国人観光客も回復していません。震災前に福島を積極的に訪れていた韓国、中国、香港、台湾、アメリカの観光客は、14年の数字で、10年の27%。特に、韓国は6%、香港は23%など、万単位の客が逃げてしまっています。これを呼び戻すことは不可欠の課題と言えるでしょう。

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