米ロは「イスラム国」空爆にいくら掛けているか

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『孫子』作戦篇に曰く、「勝つも久しければ則ち兵を鈍らし鋭を挫く。久しく師を暴(さら)せば則ち国、用足らず」。長期戦に陥れば士気は下がり、国の財政は傾くと説くのだ。

「米国防総省が過激派組織〈イスラム国〉に対する一連の軍事活動と費用を公表しました。12月16日現在、米国単独での空爆は6934回に及び、昨年8月8日から465日間の総費用は52億ドル(約6300億円)。1日平均1100万ドル、毎日13億円に羽が生えている計算です」(国際部記者)

 とはいえアメリカの国防予算は年間約5000億ドル。

 1991年の湾岸戦争では6週間で611億ドル、03年から11年のイラク戦争では6000億ドルが消えたというから今回は“微々たるもの”とも言えようが、それにしても凄まじい額だ。

 一方、9月30日から空爆に参加したロシアはどうか。

「1日約400万ドル(約4億8400万円)を費やしていると言われています。アメリカに較べれば少ないように見えますが、ロシアの今年度の国防予算は約500億ドル。負担の大きさはアメリカの比ではありません」(国際政治研究家)

 軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏も言う。

「アメリカは市民への誤爆を避けようとドローンなど無人機を多用し、精密誘導爆撃に時間とお金を割いていますが、ロシアは早期に決着すると踏んでいたフシがあります。潜水艦から巡航ミサイルを発射するなど攻撃は派手ですが、効果は疑問です。出費だけがかさむ可能性もあります」

 ウクライナ問題で国際的に孤立し、経済も苦しいロシア。頼みの原油価格は下落を続け、16日のニューヨーク先物市場では6年10カ月ぶりの安値。プーチン大統領は17日、原油価格の見通しが楽観的すぎたと告白するハメに陥っている。

「米ロとも出口戦略が見えない状況ですが、ロシアは特に苦しいでしょう」(同)

 孫子は軽率な戦も戒めている─―。

週刊新潮 2015年12月31日・2016年1月7日新年特大号掲載

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