投資家が心配する「株と為替」を「9・11」から占う

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 兜町に〈遠くの戦争は買い〉という格言があるように、貪欲な投機筋は国際紛争まで儲けの材料にしてしまう。それならば、パリのテロは「買い」なのか「売り」なのか。かつて起きた、あの“惨劇”から株と為替のチャートを占ってみた。

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 テロが発生してから週末を挟んだ11月16日(月)、日経平均株価は1万9393円と、大きく値を下げた。為替も、ユーロに対してやや円高の展開となっている。

「それでなくとも、EUにはフォルクスワーゲンのデータ改竄事件やウクライナ侵攻を巡って対ロシア制裁で混乱しています。そこへ来てパリのテロ事件はEUにとって大きなマイナスとなり、世界経済も萎縮すると見られたのです」(ニッセイ基礎研究所シニアエコノミストの上野剛志氏)

 近年のテロでいえば、2001年にアメリカで起きた“9・11事件”、04年のマドリード列車爆破事件が記憶に新しいが、今回のテロはそれに次ぐ規模。過去の例では、株価や為替にどんなインパクトを与えたのだろうか。

 たとえば9・11事件。このテロが起きたのは現地時間で朝9時前のことだったが、旅客機が高層ビルやペンタゴンに突っ込むと、翌日の日経平均は683円も暴落する(ニューヨークは4日連続の臨時休場)。さらに為替相場も3日間で3円以上のドル安に大きく振れた。

 ところが、それから1カ月、大惨事にもかかわらず、株価も為替も元の水準に戻ってしまっているのだ。テロに遭ったことが、むしろ戦争特需への期待を呼んだとも言われている。

■第二のインバウンド

「大変な事件ですが今回は、日本が思わぬメリットを享受するかも知れません」

 とは、元SMBCフレンド証券投資情報部長の中西文行氏(ロータス投資研究所代表)である。代表的なものが「インバウンド」だ。

「これから年末年始の休暇シーズンが始まりますが、年間8000万人以上の観光客を集めるフランスも、今年は敬遠されるはず。シリアに空爆している有志連合の国も同様です」

 それならば、欧米の観光客がどこを考えるかといえば、イスラム教徒が少ない東アジア。なかでも銃規制が厳しい日本というわけだ。

「欧州で和食ブームが起きていることもあり、フランス旅行をキャンセルした客たちが一斉に日本に目を向けるはず。具体的にはホテル業界、流通などは、年末にかけて第二のインバウンドブームが始まると見ています」(同)

 為替はどうか。

「今回のテロで一番買われる通貨はドル、次に円です。アメリカはテロに揺れる欧州とは距離があるし、今年の12月にもFRBによる利上げが予測されています。逆に欧州中央銀行(ECB)は金融緩和を示唆していますから、ユーロ安に拍車がかかる」(同)

 長期で見れば、やっぱり「有事のドル」と中西氏は予測する。外貨預金もやっぱり「ドル」が第一候補なのだ。

「特集 7人のテロリストで死傷者480人 自爆の爆薬は『魔王の母』 パリを硝煙の都に変えた『イスラム国』に次がある!」より

週刊新潮 2015年11月26日雪待月増大号掲載