ロシアお家芸「ハニートラップ」に苛立つノルウェー

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 あるフランスの劇作家に言わせれば「男は嘘の国の庶民だが、女はその国の貴族である」そうだし、孫子に曰く「兵は詭道」である。国際謀略の世界において美女が男を誘い込み、情報を得る“ハニートラップ” の絶えぬ所以(ゆえん)だが、10日、ノルウェーの諜報機関が懸念を表明した。同国の複数の政治家やビジネスマンがロシアの情報機関の工作の対象となっているというのだ。

「手法は冷戦時代と変わらないそうです。大量に酒を飲まされ、勢いで女性と関係を持つとそれをネタに脅迫される」(国際部記者)

 現代インテリジェンスの世界に精通する作家・佐藤優氏によれば、「どの国もやっていること」だそうだし、ロシアに詳しい国際政治学者も、

「ハニートラップはロシアのお家芸のようなもの。情報機関内に専門部局まであるのはロシアぐらいでは」

 と驚かない。ではなぜ今、ノルウェーはロシア情報機関の脅威を言い立てるのか。

「実は、ロシアの現在の最重要戦略のひとつは北極海進出です。北極海の広大な大陸棚の領有権を主張しているのですが、背景にあるのは温暖化による海氷面積の減少で、航路や資源開発の拡大を目論んでいるのです。そのため、クリミア併合後、硬化した欧州に対してロシアは北欧方面での即戦体制強化で応えました。軍事的緊張の高まりにノルウェーは神経を尖らせているのです」(同)

 加えて、佐藤氏も言う。

「長い国境線を持つロシアの防衛思想の根幹には、自国国境の外側に緩衝地帯を設ける、ということがある。国境を接する北欧諸国は不断の工作対象なのです」

 内憂を抱えながらも南で派手なシリア空爆を仕掛け、北で不穏な工作を止めないロシア。注視が不可欠だ。

週刊新潮 2015年11月26日雪待月増大号掲載

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