[東芝不正会計]株主は大損 900億の赤字でも戦犯元社長への賠償請求は“慣れ合い” たったの6000万

企業・業界週刊新潮 2015年11月19日号掲載

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 不正会計問題を受け、東芝は旧経営陣5名に対して損害賠償を求める訴えを起こした。しかし、請求額は“たったの「3億円」”。過去のケースに当てはめてもかなり控えめな数字であるし、1人当たり6000万円という額も、西田厚聡元相談役(71)らの資産をもってすれば、造作もなく差し出せる金額であることが窺える。

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 経済ジャーナリストの町田徹氏の話。

「請求した額からは、旧経営陣をとことんまで追及したくないという東芝の姿勢が表れています。ですから、裁判も馴れ合いで終わるのではないでしょうか。本来なら、東芝は信用ならない会社だと世界中に広めてしまったのですから、金額的にはゼロが2つ足らないくらいです」

 結局、現経営陣が株主から訴えられることを避けるために、西田元相談役、佐々木則夫元社長(66)、田中久雄前社長(64)、村岡富美雄(67)、久保誠(63)元副社長ら5人の提訴に踏み切ったに過ぎないのだという。

「実は、奈良在住の株主が、9月8日に提訴請求書を東芝に送っていました。それは、会社が室町正志会長兼社長をはじめとする歴代役員28人を相手に、10億円の損害賠償請求訴訟を起こすように求め、もし、書面の到達から60日以内に提訴しないようなら、会社法に則って、代わりに株主代表訴訟を起こすという内容でした。それゆえ、東芝は期日ギリギリの11月7日、休日である土曜日に、提訴を発表せざるを得なかったのです」(同)

 裁判逃れのための裁判だったというわけなのだ。

 会社側からの追及が生温いのならば、捜査当局の方はどうなのか。

 社会部記者がこう指摘する。

「刑事事件に発展すると、被疑者になり得るのは、西田、佐々木、田中の歴代3社長です。ただ、彼らが不正経理をすべて指示していたという確証は得られていない。“売上を伸ばせ”とか“チャレンジ”とかは口にしても明確に粉飾を命じたわけではないようです。その点、オリンパスの水増し事件とは異なる。不正経理の実行を迫るような口ぶりに、各部門の幹部がプレッシャーを感じ、利益の水増しに手を出してしまったという構図なのです」

 組織ぐるみの不正には違いないものの、トップの犯意を確定させることが難しいのだ。

「なので、東芝の不正経理問題は、金融庁から課徴金が科されて終わり、という見方が有力になってきています。有価証券報告書の虚偽記載に問われたケースでは、課徴金の過去最高額はIHIの16億円でした。その額は、不正会計を行っていた期間に発行した社債や株式で調達した金額などを基準にして決まります。おそらく、年内にも東芝への処分が出されますが、IHIの課徴金を上回る見通し。すでに東芝は、独自に84億円という試算をし、その分を引当金として計上しています」(同)

 これだけ世間を騒がしたにもかかわらず、戦犯5人は刑事事件に問われることもなく、大して懐も痛くない程度の賠償金で許されそうである。そこで泣きを見るのは、やはり株主と一般社員なのだ。

「特集 たった3億円で許される『東芝元社長』ら戦犯5人の資産目録」