反・「加工肉に発がんリスク説」 元気で長生きする高齢者ほど肉を食べている

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 10月26日にWHO(世界保健機関)傘下のIARC(国際がん研究機関)が発表した〈一定量の加工肉を摂取し続けると、がんの発症リスクが高まる〉なる衝撃的なニュース。ここでいう加工肉とは塩分が加えられたり、燻製にされた肉のことを指し、普段の食卓でお馴染みのハムやベーコンもこれに含まれる。

 悪玉に祭り上げられてしまった“肉食”だが、逆に、長寿の秘訣であるとの説が唱えられているのもまた事実である。

“肉食”は身体に悪いのか?

 例えば、世界最高齢の80歳でエベレスト登頂を成し遂げたプロスキーヤーの三浦雄一郎さん(83)は週に1度、1キロのステーキを平らげ、普段でも食卓にはほとんど肉料理が並んでいるという。

 また、最高齢の現役臨床医である聖路加国際メディカルセンターの日野原重明理事長(104)も、大好物の牛ヒレ肉を週に2日は口にすると語っていた。

 さらに、“世界最高齢スプリンター”としてギネス世界記録にも認定された、宮崎秀吉さん(105)の場合、朝食にはマーガリンと自家製ジャムを塗ったトースト1枚にトマトやブロッコリー、バナナとともにハム1枚が用意される。そして、夕食のメニューは週に5日が牛ロースの焼き肉で、他に焼き鮭の切り身、季節の野菜の煮つけ、茶碗7分目のごはん、みそ汁などだという。

 なるほど、“肉食”は健康寿命を保つのに貢献しているかのように見える。

■菜食主義者はゼロ

 浜松医科大学の高田明和名誉教授が言う。

「現在、日本では100歳以上の高齢者は5万人以上になりますが、そのなかで菜食主義者はゼロに近いのは間違いありません。肉には野菜とは格段の差で、必須アミノ酸の一種であるトリプトファンが、ふんだんに含まれていることが重要なのです」

 このトリプトファンは神経伝達物質であるセロトニンの材料になるという。

「若い女性がダイエット中に、うつ病を患ったりしますが、それは肉を摂らずセロトニン不足に陥っているからです。同時に、トリプトファンは、ウイルスや菌に対する免疫力を高めることもわかっている。インフルエンザや肺炎にも罹りにくくなり、元気で長生きする高齢者ほど肉を口にしているのです」(同)

 しかも、日本人の肉の摂取量は欧米に比べて、まだまだ少量なのである。

 桜美林大学の柴田博名誉教授によれば、

「日本人の加工肉の摂取量は、1日当たり13グラムです。WHOの研究機関が発表した発がん率が18%アップするという50グラムにはまったく及びません。赤身肉については日本人は1日50グラムで、欧米人はいずれもその2~3倍にあたる量を消費しています」

 肉と魚の摂取量が平均して1対1の割合となる日本人の場合、IARCの調査結果は何も心配する必要はないという。

 医学博士でもある、日本食育協会の本多京子理事の話。

「不安に思うあまり、肉類を一切食べないと考えるのは浅はかとしか言いようがありません。健康のためには、一定量の動物性たんぱく質を摂ることが肝心です。ただし、何でも食べ過ぎれば、有害になるのは当たり前。ハム、ソーセージなどの加工肉も含め、牛や豚、鶏肉などの色々な種類の肉をそれぞれに違った料理法でバリエーション豊かに食べることが、健康維持のコツではないでしょうか」

 どうやら、メリットとデメリットを天秤にかければ、肉は食すべしということのようである。

「特集 WHO発の衝撃ニュース! ハムとソーセージは『アスベスト並み』の発がん性とは本当か?」

週刊新潮 2015年11月12日号掲載

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