【データが証明】学力低下の元凶は「スマートフォン」だった――白石新(ノンフィクション・ライター)

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■トラブルになりやすい

 前出の安川氏が言う。

「スマホはたしかに便利ですが、反面、通信アプリを使って文字や絵を送り合うというコミュニケーションは、非常に誤解をうみやすい。子どもたちは理解力もまだ発達途上なので、ちょっとしたことから行き違いが生じます。たとえば、遊びにいく約束をして、“交通手段は何にするの?”と尋ねるつもりで“何でいくの?”と書き送ってしまい、相手には“どうして、お前が来るんだ?”という意味に誤解されてトラブルになる、というようなことは日常茶飯事です」

 子どもたちがスマホを使うにあたっては、時間を奪われる以外にも、実にいろいろな弊害があるようなのだ。では、家庭ではどう対処すべきなのか。育児・教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏は、自身の中学生の息子と次のような約束をかわしているそうだ。

「私自身、漫画や『信長の野望』といったパソコンゲームに夢中になった時期もあったので、子どもがスマホにハマるのは理解できる気がします。ただ、ハマって無為な時間を過ごしてしまった時、“いったい僕はなにやってんだ?”と気づいて反省できるかどうかです。そうして自分でルールを作ることも大事だと思いますが、わが家では、ネットと接続するブラウザにフィルタリングし、アプリを新しく購入するときは、親としっかり相談することになっています。さらに家でスマホをいじるのは、自室ではなくリビングにすること。寝る時にはリビングに置いてある充電器につなぎ、自室には持ち込まないことを約束させています」

 こうしたルールを徹底できれば、スマホも“便利な道具”にとどまりそうに思えるが、それでも、

「そもそも、スマホが普通の子どもにとって必要かどうか、考えてみてもいいかもしれません」

 と、川島教授は言い、東日本大震災という過酷な経験をふりかえりながら、スマホの必要性について、こう説くのである。

「宮城県内で子どもたちと交流する機会があるたびに、果たしてスマホは本当に必要か、と問うんです。東日本大震災の時、1カ月ほど携帯電話が不通の地域がありました。その時、家族や友だちとのコミュニケーションは、LINEを駆使しているいまと比べて希薄だったか、と問うと、子どもたちは異口同音に、そんなことはなかった、とこたえます。ひっきりなしに言葉や絵を送り合うスマホ経由のコミュニケーションに慣れてしまうと、どうしても生活に必要な気がしてくるのでしょうが、その必要性については、いま一度考えるべきでしょう」

 野放しのスマホ使用による子どもたちへのマイナス効果は、想像以上に大きい。しかも、学力低下に直結しているなら、もたもたしている時間はない。こればかりは“既読スルー”は禁物である。

白石新(しらいし・しん)
1971年、東京生まれ。一橋大学法学部卒。出版社勤務をへてフリーライターに。社会問題、食、モノなど幅広く執筆。別名義、加藤ジャンプでも活動し、マンガ『今夜は「コの字で」』(原作)がウェブ連載中。

週刊新潮 2015年11月5日号掲載

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