【データが証明】学力低下の元凶は「スマートフォン」だった――白石新(ノンフィクション・ライター)

社会週刊新潮 2015年11月5日号掲載

 いまや小中学生の生活にも深く根を下ろしてしまったスマートフォン。のべつまくなしにゲームやLINEに興じ、学習や睡眠の時間がけずられているばかりか、スマホの使用で脳の活動自体が低下している可能性まであるという。学力低下の元凶、ここにあり。

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 スマートフォンが学力低下の原因になっている――。そんな調査結果が次々に発表されている。

 以前から、スマートフォンに没頭するあまり、学習時間や睡眠時間がけずられてしまうという問題は、指摘されてはいた。それが徐々にデータとして明らかになってきた。そしてスマホの使用が、学力低下に直接影響している可能性まで見えてきたのだ。

「調査をするまで、こんな結果になるとは予想だにしませんでした。スマホ使用が直接的に学力低下をひきおこしている可能性が、ほんとうにあるのです」

 そう語るのは、仙台市教育委員会と共同で調査をおこなった、東北大学加齢医学研究所の川島隆太教授で、

「早急に手をうたなければ、大変なことになるかもしれません」

 と警鐘を鳴らす。だが、そのおそるべきデータを見る前に、子どもたちの生活にいかにスマホが入り込んでいるのか、実態をながめてみよう。現代の子どもたちは、まさにスマホに支配され、スマホの奴隷と化していると言っても過言ではないのではないか――。そんな衝撃的な暮らしぶりが浮き彫りになるのだ。

「最近、中学校の昼休みがやけに静かだという声をよく耳にします」

 スマホをはじめ、ネットを介したいじめ問題などに取り組む団体、全国webカウンセリング協議会理事長の安川雅史氏が語る。

「昔、と言ってもつい最近までそうでしたが、子どもたちは昨日見たテレビ番組のことを、翌日の休み時間に語り合ったものです。しかし、今の子どもたちはスポーツ中継とかを見ながら、LINEなど無料通信アプリで、のべつまくなしに言葉を送り合っています。一日中、LINEでやりとりしているため、学校で直接顔をあわせた時に、なにを話していいのかわからない。そのために、せっかく休み時間になっても、おしゃべりもせず、スマホでゲームやLINEなどをやってしまう。だから休み時間がやけに静かなんですよ」

 こうした現状を踏まえて、安川氏は将来を案じる。

「思い出というのは顔を見合わせて経験したことなんですよ。このままでは、今の子どもたちが、いつか同窓会を開いてもなにも話すことがない、なんてことになりかねません」

 やんやと賑やかな休み時間を経験してきた人間にとって、静まり返った教室で中学生たちがうつむいてスマホをいじっている光景は、まるでSF映画だ。しかも教室の外では、さらに状況は悪化しているという。安川氏がつづける。

「進路が決まった中学生のケースですが、春休みに同じ高校へ進学する者同士で、LINEで情報交換をしているうちに、送った言葉の意味の取り違えなどからトラブルになり、入学式当日から登校拒否、といったことが少なくありません。ほかにもスマホのゲームにはまっている子は、ゲームのメンテナンスの日だけ登校するという事例もある。恋愛ゲームの場合、ゲーム上の恋人に“もう寝たい”と言ったところ、“もうすこし起きていて”と促され、満足に睡眠もとれない、という子までいるんです」

 昼夜をとわずコミュニケーションを強要され、仮想恋愛でバーチャルな恋人に睡眠時間を奪われ、あまつさえ高校進学の機会すら失ってしまう――。2008年にアップル社がiPhoneを発売してからわずか7年。子どもたちの生活は、これほどまでスマホに支配されていたのである。

 これで勉強に影響が出ないわけがないが、実は、時間が奪われることによる間接的な影響にかぎらず、スマホの利用が直接、学力低下の原因になっている可能性があるというのだ。

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