【データが証明】学力低下の元凶は「スマートフォン」だった――白石新(ノンフィクション・ライター)

社会週刊新潮 2015年11月5日号掲載

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■勉強時間は同じでも

 昨年8月、文部科学省が所管する国立教育政策研究所が「平成26年度全国学力・学習状況調査」の結果を発表した。その際、国公私立の小学校2万352校と、中学校1万173校を対象とする悉皆(しっかい)調査も実施され、携帯電話やスマホの利用時間が短い生徒ほど、平均正答率が高くなるという結果があらわれたのだ。

 たとえば小学生の算数Bの成績。1日のスマホ使用時間が30分未満の生徒の平均正答率が60・7%なのに対し、4時間以上と答えた生徒は43・6%と、スマホを使う時間が長いほど、正答率は顕著に低くなっていた。この傾向は中学の国語や数学の正答率においても、まったく同じだった。

 また横浜市教育委員会が中学生を対象に、スマホや携帯でネットやメール、SNSを毎日どれぐらいやるか、アンケートをおこなった結果、どの学年も約50%が、1時間以上やっていると回答したという。これを同教委が、教科調査の正答率とクロス集計したところ、メールやSNSに費やす時間が長い生徒ほど、正答率が下がると判明した。たとえば、中2で30分以下と回答した生徒の正答率が64%なのに対し、3時間以上の生徒は51%と、激しく低下していたのだ。

 これを、スマホによって学習や睡眠の時間が奪われたため、と結論づけるのは早計だという。実に、もっと深刻なデータがつまびらかになっていたのだ。それが冒頭で少し触れた、仙台市教委と東北大が共同でおこなった『学習意欲の科学的研究に関するプロジェクト』の調査結果である。すべての仙台市立小学校124校と同中学校63校、および中等教育学校1校に在籍する、小学5、6年生約1万7000名と、中学生約2万5000名を対象におこなったもので、すると、

「スマホや携帯を長時間使用すると、いくら勉強をしても成績が下がってしまうという結果がでました。衝撃的でした」

 と、前出の川島教授は驚きをかくさない。とりわけおそろしいのは、家庭での勉強時間が30分未満だと答えた生徒に見られたデータだという。要するに、ほとんど勉強しない生徒たちのケースなのだが、

「そういう子どもたちのなかでも、スマホを持っていないために、LINEなどの通信アプリを使用しない子どもたちの数学の平均点は、約61点ありました。ところが、通信アプリを3時間以上使う生徒の平均点は、いきなり50点以下に下がってしまったのです。これはまさに何らかの原因で、子どもたちの記憶が消去されているとしか考えられません。授業で教わった内容がきれいに消えて、努力が無駄になってしまっているのです。まったく予想外の、驚くべき結果です」

 実際、この調査結果は見るほどにおそろしい。たとえば、毎日30分から2時間の勉強をしている生徒同士を比べた場合である。スマホを1時間未満しか使用しない生徒は、数学の平均点が65点を超えていたのに対し、同じ勉強時間を確保していても、スマホを4時間以上使っている生徒の平均点は、50点台前半まで下がってしまっていたのだ。

 長時間勉強している生徒の場合も、スマホの使用時間が明暗をわけている。1日2時間以上勉強する生徒は、スマホ使用時間が1時間未満なら、数学で平均70点以上を獲得している。ところが、同じく2時間以上勉強していてもスマホを2~3時間使う生徒の場合、平均点は10点以上低い。たくさん勉強しても、長時間スマホをいじっていれば成績は下がるというわけだ。

 これは数学にかぎらず、国語、理科、社会、英語のどの科目にも、同じ傾向が確認されている。

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