秋季リーグで1勝「東大野球部」に145キロ「2年生サウスポー」

スポーツ 野球

  • ブックマーク

Advertisement

 ごく稀にだが、天は二物を与えることもある。5カ月前、東京六大学野球で94試合ぶりに勝利を手にした東大野球部。次なる目標は、同じ相手から2勝して得られる「勝ち点」だが、それを叶えてくれそうなサウスポーが現れたというのだ。

 ***

東大の宮台康平投手

 5月23日に春季リーグの法政戦で白星をつかんだ東大は、秋季でも9月19日、同じく法政に勝利。その立役者となったのが2年生の宮台康平投手(20)だった。スポーツ紙の担当記者が言う。

「先発の宮台君は、6回2失点6奪三振と好投、大学初勝利を挙げました。今季、初戦にはすべて先発し、10月24日からの立教戦を残して防御率は0・86と、リーグトップの成績でした」

 が、24日には立教に2本塁打を浴び、一転負け投手に。翌日も東大は黒星を喫し、今季日程を終了。13年ぶりの勝ち点は来季へお預けとなったものの、

「ストレートは最速145キロで、決め球のシンカーもいい。リーグで一、二を争う本格左腕です。今年3月に肩を痛めて長いイニングは投げられず、スタミナが課題でしたが、24日は5失点ながら自己最多の135球で完投しました。昨年から宮台君を『最下位から脱するための投手』と評していた監督が、来季を見据えて投げさせたのです」(同)

 すでに複数のプロスカウトも興味を示しているという逸材。それでも本人は昨年、スポーツ紙の取材に、

〈将来は日本を動かす仕事がしたい〉

 と、いかにも東大生らしい抱負を口にしていた。

■ライバルは松井裕樹

 文武両道を突き進む宮台投手は、神奈川の進学校・県立湘南高校から現役で文科I類に合格。県内の高校で英語を教える父の忠さん(49)に聞くと、

「野球は小3から始めて、高3の春には県でベスト8に入りました。その時、最後に戦った相手は東海大相模。先日、中日にドラフト1位指名された2年下の小笠原君も登板しました」

 試合は、3対0で惜敗。

「勉強については、私から『やれ』と言った記憶はなく、本人が高校の時に『野球だけとか勉強だけの奴は嫌いなんだ』と言っていました。ただ、うっかり屋のところもあって、東大の2次試験の出願を締切り前日の夜まで忘れていて、翌朝に慌ててお金を振り込み、本人が本郷まで願書を届けに行ったこともありました」

 そんな中で、今に繋がる“闘志”を明かしてくれた。

「息子の背番号1は、普通は大学の投手がつけない番号です。どうやら同い年で神奈川大会の大スターだった楽天の松井裕樹君(桐光学園)を、ひそかにライバル視しているようなのです」

 そこで、本人に聞くと、

「プロ入りというのは、僕がそのレベルになく、現実的ではありません。『日本を動かす仕事』と言ったのも、明確なビジョンがあったわけでなく、一つの選択肢で……。今はまずリーグ戦で勝ち点を取らないと頑張っている意味はありませんし、必ず取れると思います」

 そつのなさと秘めたる自信。絶妙のブレンドである。

「ワイド特集 わが逢魔が時」より

週刊新潮 2015年11月5日号掲載

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。