「就活」再見直しで問われる「経団連会長」の識見

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 右へ行くべきか、左へ行くべきか。人生には幾つか重要なターニングポイントがある。その最たるものは就職活動だが、いつ始まり、いつ終わるのかが、大人の事情で色々変わる。今年、日本経済団体連合会は“就活”スケジュールを大幅に変えたが、再び変更するというのだ。

 就活の日程は、昨年度まで大学3年生の12月に企業説明会が開始され、面接などの選考は4月に実施されていた。それを今年は企業説明会を3月に、選考を8月に先送りするルールが敷かれた。全国紙の経済部記者が経緯を説明する。

「3年前の安倍政権発足後、政府は“就職活動が学業の妨げになっている”として、経団連に就活を大学4年生になる前の3月から開始するように要請しました。経団連もこの考えに賛同して、実施に踏み切ったのです」

 ところが、多くの企業が大学3年生の夏からインターン名目で“青田買い”をしていることで、大学生の間から“逆に、就活期間が長引き、学業に支障が出ている”と批判の声が噴出した。昨年6月、経団連会長に就任した榊原定征氏(72)が、そうした声を受けて選考時期を来年から6月に前倒しする方針を固めたのだ。

「わずか1年での見直しは経団連会長としても、経営者としても見識が疑われますよ」

 こう指摘するのは、経団連加盟企業の役員だ。

「スタートしたばかりですから、混乱するのは当たり前。学生のみならず、加盟企業からも不満や戸惑いの声が上がるのも、当初から予想できたはず。それを改善するのが経営者の努力というものでしょう。多少の“雑音”が耳に入ったくらいで、右往左往するのは財界トップとして情けない」

 別の加盟企業の役員は心配顔で、

「そもそも就職活動の先送りは、安倍総理と米倉弘昌前会長との約束。それを容易く反故にするのは“仁義”に反し、政府との今後の付き合いを考えるとプラスとは言い難い。2人の顔を立てて2~3年は継続すべきだったのではないか」

 コロコロ変わる就活のルールに、学生は翻弄されるのである。

週刊新潮 2015年11月5日号掲載